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かなり季節はずれだが、クリスマスに起こる小さな奇跡を描いた
短編集を読んだ。
昨年買って、なんとなく、読みかけたまま春を迎えてしまっていた。
舞台はアメリカ。家族のいない孤独や、貧乏、偽善、傲慢、老病、
差別といった傷を抱えた『どこにでもいそうな人々』が、
クリスマスの奇跡を─『気持ちが明るくなる』という、ささやかながら
生き方に関わる体験を余儀なくされる、八編の物語。
あたたかい家族の絆の一部分であることを確認するクリスマス・
シーズンに、行き場のない思いを抱える『どこにでもいそうな人々』は、
日本のお正月じゃないけれど、アメリカにもたくさんいるのだった。
ままならない人生、相手を変えようなどと思い込まずに、生活に
根ざした『勇気』をもつこと、それを表現すること。
それこそ、小さな奇跡を呼び起こす種なのだろう。
著者のキャサリン・パターソンは1932年中国生れ。
父が宣教師だったため、昭和30年代に4年間日本にも滞在している。
そのせいか、原爆のジョークがちらっと出てきたりする。
特に印象深かったのは、「主のしもべ」のレイチェルという少女。
クリスマス劇でマリア様の役を演じたいと願っているが、
演技力の問題もあって邪魔される。
まるで作者の分身のように、父親が牧師であろうと、神様は
その子に特別なごひいきはしてくれない、
と思い知っているレイチェルが微笑ましい。
(マーズ)
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管理者:お天気猫や
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