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☆夢図書ほのぼのミステリ短編集2
ミステリを書いても遠い異世界を感じる恩田さんと正反対に、
ファンタジックな異世界を書いてもどこかが必ず「本格ミステリ」に
なっているのは加納朋子さんでしょうか。
「日常の謎」ミステリの代表選手、加納さんの短編集
「沙羅は和子の名を呼ぶ」はなんと「幽霊作品集」です。
本物の幽霊が出るのに、幽霊自体は超常的存在なのに、
それでもそれぞれに「ある意味で」ミステリ。
いよいよ加納さんも「非日常の謎」をレパートリーに入れられましたか。
それにしても、この短編集の凄いところは、それぞれの短編は全くバラバラに
書かれ、単独で読めば普通に単なるファンタジーだったり、いつものように
トリックのあるミステリだったり、ジャンルが全く異なっているように
見えるのに、この「一冊」にまとまると、単独では見えないテーマが
浮かびあがってくるところなのです。
集英社版なのに、まるで加納さんのデビュー出版社のよう(笑)。
いや、出版社は意図していないのでしょうが、構造的にトリッキー。
これはもう、性分なのですね。
作品一つ一つは文芸好きな女子校生が書いてみたいと憧れるような、
可憐で透き通った少し哀しげなお話です。
加納さんの短編集の習いで、最初から順番に数本読み、なるほど、
この本は「幽霊」テーマなのだな、と自分で勝手に決め込んだころ、
とある一作で「あれ?これは普通のファンタジーだな?
『幽霊』は出なかったな?」。
しかし。読み終わった直後、愕然としてしまいました。
ああっ!違う、『幽霊』は出ていたっ!
とんでもないものが幽霊だったっ!
恐るべし、加納トリック!
(ナルシア)
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管理者:お天気猫や
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