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読んだ端から、次々と忘れていくので困りものだ。 おかげで、常に新鮮な気持ちで本に臨めると、考えることにしよう。
特に歴史が好きというわけではないが、 イギリスの中世史やハプスブルク家の歴史は興味深い。 ファンタジーが好きなこと、実際に何度か旅行したことで、 イギリスの歴史を知りたいという思いは、 どちらかというと、実際的な必要から。 その点、ハプスブルク家については、 教科書の世界史の知識から出発して、 もう少し知りたいなという、純然たる好奇心から。
ハプスブルク家について手軽に、楽しく学ぶのに、 講談社現代新書の『ハプスブルク家』、 『ハプスブルク家の女たち』(共に著者は江村洋) は、最適だった。 特に、『ハプスブルク家の女たち』を読んだことで、 ハプスブルク家の娘たちの起伏に富んだ人生を垣間見、 ドラマティックに大きくうねる人生の悲哀、 つまりは、はじめて、「人間」の存在を感じた。
さて。 さらに、好奇心を満たすのに、 ハプスブルク家の人々の「食生活」というのは、うってつけ。 ヨーロッパを支配した権力を支えた食の秘密を覗くわけだから。
ハプスブルク家の長い歴史の中には、 グルメの皇帝もいれば、精進料理を愛した皇帝もいる。 過食やダイエットに苦しんだ皇帝や皇妃も。
「オーストラリアにマリア・テレジアあり」と その名をはせた、女帝マリア・テレジア。 多くの子どもに恵まれ、 ハプスブルク家の結婚政策を積極的に押し進めていった。 その活力の秘密が、「オリオ・スープ」だという。 非常に高カロリーなスープで、 それまでの粥状のスープからずいぶんと洗練されたものだったそうだ。 ハプスブルク家の結婚政策は、外交とは離れたところで、 オーストラリアの食の技を フランスやスペインに伝える役割をも果たしていた。 また一方では、マリア・テレジアの時代に フランス料理が登場するようになり、 ウィーンの宮廷料理に大変革をもたらしたそうだ。
他にも何人かの皇帝や妃が登場するが、 ミュージカルでも有名なエリザベート皇妃。 ヨーロッパ随一の美貌を誇るシシー(エリザベートの愛称)のダイエット法。 「ジュース療法」「乳清療法」「肉ジュース療法」 医学的な裏付けもなく、危険なものであったらしい。 事実、リューマチや貧血、胃腸障害、骨粗しょう症、 神経痛に悩まされていたという。 その危険なダイエットの一方で、 甘いものが大好きで、スミレのシャーベットや スミレのアイスクリームなどには目がなかったそうだ。 宮廷生活を嫌い、旅に身をまかせたシシーの不安定さを 「食」からも、うかがえるかもしれない。
マリア・テレジアのオリオ・スープや シシーが好んだというキジのクリーム・ポタージュスープ、 スミレのシャーベットやハプスブルク家の当時のレシピも 紹介されていて、ビスケットやラスクくらいは試せないものかと、 ハプスブルク家の宮廷料理に闘志を燃やしている。
この本を読み始めた頃(思い返せばずいぶん前だが)、 TVで「ヘンリー八世の食卓再現」を見たこともあり、 中世から近世の食の歴史に大いに関心を持つようになっている。(シィアル)
※ハプスブルク家(おおざっぱに言えば、15C〜20C初頭のヨーロッパで大きな影響力・政治力を持っていた家柄。) ※ヘンリー八世(在位1509〜1547)
『ハプスブルク家の食卓』 著者:関田淳子 / 訳:林啓恵 / 出版社:集英社
第1章 皇帝たちの食卓
第2章 宮廷料理の舞台裏
第3章 華麗なるウィーン宮廷菓子
第4章 栄華の象徴―食器と銀器の饗宴
2002年01月10日(木) ☆本をどこで買いますか?(その1)
2001年01月10日(水) 『茨姫はたたかう』
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管理者:お天気猫や
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