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今、私の手元に、「リンダ先輩S」のもとから借りてきた 未読『リンダ・ハワード』が8冊ほどたまっている。 この楽しみにやっと手をつけた。 『天使のせせらぎ』、原題は『エンジェル・クリーク』。
時代は1876年。 西部開拓時代である。 コロラドの新興の町、プロスパーを舞台に描く、 リンダの意欲作(2002年刊)。
『エンジェル・クリーク』と呼ばれているのは、 ヒロインのディーが、女ひとりで切り盛りしている 農場をうるおす雪解け水の流れ。 この水のおかげで、他が干ばつにあえいでも、 谷は緑に満ちている。 ディーにとって、なにものにもかえがたく、 わかちがたい聖なる場所。 この農場での収穫が、 両親の亡きあと、暮らしの支えとなった。
そんなある日、プロスパーきっての大農場の息子が故郷に帰り、 ディーのもとをたずねる。 エンジェル・クリークを売って欲しいというのだ。 これまで気に入らない客は散弾銃で追っ払ってきたディーは、 ルーカスの申し出にも当然、ノーと答える。
しかし、ディーの予想に反し、読者には暗黙の了解のもとに、 そこからの展開は、いつもとはちがったものに・・・ というストーリー。
リンダといえば、どういう状況をテーマに書いても 徹底して調べ、ロマンス小説でありながら、他ジャンルとしても 成り立っているというのは、ファンなら周知のこと。
ただ、今回のストーリーで、おおっと思ったのは、 ヒロインが三人いることだ。 確かにディーはメインの主人公だが、 銀行家の令嬢オリビア、 酒場の女ティリーも、 きちんと描かれている。 ちゃんとしたヒロインが三人いて、一冊の ボリュームに収まるのは、今までの作品からすると 物足りないのではと思われるかもしれないが、 プロットで巧妙に結ばれている彼女たちは、 むしろ三人いることでバランスがとれているかに見える。
そしてここには、リンダファンにとって、 もうひとつの楽しみもある。 『風と共に去りぬ』が少女時代の愛読書だったという リンダがいつか描きたかったにちがいない、 アメリカがアメリカとなるまでの時代を描いた 大河歴史ロマンの香りが。
南北戦争が終わって十年あまり。 もちろん、女性たちはまだまだ自由ではないし、 ディーのように若い女性がひとりで生きるなど、 とんでもない時代である。 南北戦争を闘ったあのスカーレット・オハラでさえ、 夫がいたのだ。
読みながら、リンダの力強いメッセージが、 エンジェル・クリークの清らかな 流れとともにあふれてくる。
どんな人にも、その人だけの出会いがあるから。 そのときには、素直にチャンスをつかみなさい、と。 (マーズ)
『天使のせせらぎ』 著者:リンダ・ハワード / 訳:林啓恵 / 出版社:ヴィレッジブックス
2001年01月08日(月) 『FAST FLOWER ARRANGING』
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管理者:お天気猫や
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