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サブタイトルは、「一児童図書館員のあゆんだ道」。 著者は、英国人のアイリーン・コルウェルさん。 ロンドンのユニバーシティ・カレッジに初めてできた 2年間の図書館学を、奨学金を得て学んだ。 卒業後は、曲折を経て、 ロンドン北部のヘンドン図書館に 児童図書館を新設するという大任を果たし、 その分野の草分けとなった人である。
この翻訳を手がけている石井桃子さんとの 交流もあるそうだ。 それにしても、他の世界でもそうだけれど、 児童図書館の世界でも、本書の内容はいまだに新鮮に読める。 といって、私は図書館員でもなんでもないが。
コルウェルさん(載っている写真を見ると、どうしても 知人のように「さん」づけで呼んでしまいたくなる)は、 子どものころから、本を読むことと、子どもと遊ぶのが 好きだったから、その両方ができる仕事をしたいと、 ずっと願っていたのだという。
そういう発想は、単純なようで複雑な選択だ。 好きなものひとつだけなら、作家になろうと思うかもしれないし、 保母さんや小学校の先生になったかもしれない。 でも、両方を兼ね備えた仕事となると、 まだ他の人がほとんど手をつけていないけれど、 子どもたちにとって必要不可欠な仕事となるのだから。
彼女は、今は日本でもかなり盛んになっている 児童図書館でのストーリー・テリングを広めることに 熱意をもって取り組んだ。 本書のなかでもこころ構えや技術的なことに言及している。 そして、それまで島のように孤立していた 世界中の児童図書館の職員どうしの交流も進めた功績は大きい。
これもまた偶然というか’計らい’なのだけれど、 彼女はこうも言っている。 語り聞かせるお話を覚えるときは、一言一句を覚えて再現する 必要は普通ないのだが、
「くり返しのあるお話、また特に書き方に特長のあるお話 ──イギリスの場合では、『キップリングのなぜなぜ物語』とか、 ルーマー・ゴッデンの『ねずみ女房』など──は、その ことばどおりおぼえなければなりません。」(本文より引用)と。
(※『ねずみ女房』はつい最近とりあげた本である)
それにしても、同じ国・同じ時代とはいえ、 エリナー・ファージョンの前で、 その作品を読み聞かせ、どこをどうけずったか わからないと作家に感嘆されるとは。 本文のなかでは終始謙虚で、背の低いことにコンプレックスさえ 感じているらしい彼女の底力が、 そういう場面からも涌き出ている。 シェイクスピアが今生きていれば、同じことを コルウェルさんはやってのけただろう。 ただし、一言もけずらずに。 (マーズ)
『子どもと本の世界に生きて』 著者:/ E・コルウェル / 訳:石井桃子 / 出版社:こぐま社
2001年09月20日(木) 『魔女ジェニファとわたし』
2000年09月20日(水) 『「我輩は猫である」殺人事件』
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管理者:お天気猫や
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