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2002年夏号の『銀花』がとどいた。 今年はちょっとぜいたくをして、年間(といっても季刊4回)購読を しているので、書店で立ち読みする間もあらばこそ、 家にとどくうれしさ。
今号の編集あとがき(編編草)に、 「世の中でいちばん無駄だけれどいちばん役に立つような 雑誌を作りたい」 かつての編集長がそう願ったと記されている。
銀花の、まさに銀のごときクオリティーは 万人向けではないかもしれないが、 銀花がもしも世に存在しなかったら、確実に なにかが失われていただろうと思わされる。
日本の文化、人間の文化を深くみつめ、 美しい日本のことばと写真、煎じ詰めた哲学的レイアウトで 惜しみなくさらけだしてくれる雑誌。
そして何よりも、銀花は「手」の雑誌。 工芸は手の仕事で、手は頭脳の一部で、 ひとが手にこめた魂は、創られた物に宿る。 書かれた作品でさえ、手で記され、あるいは打たれたもの。 だから、作家が書いた直筆のエッセイも載る。
いつも想うことがある。 ぬくもりというもの、無機的な物質とはちがってみえる 不思議な輝き、叙情、シンパシィ、けだかさ、ものの哀れ。 そのようなものを本質として私たちに 感じさせるのは、自然のなかにはなくて、 人間が手でつくったものだけにあるのではないのか、と。
世界には生命が満ちていて、 私たちも生命の渦の中にいるけれど。 樹も草も花も雲も魚も、たとえどれほど愛らしい仔猫であっても、 創造主から生れてきた者はすべて、何かを宿した物体であて、 宿ったものが去ると、輝きは失われてゆく。
けれど、ひとが手でつくったもの、魂を込めてあらわしたものは、 その形が完全に崩れ去るときまで、 極北のオーロラにも似たオーラを発し続けるのだと。 それは、この世界で、人間である私たちにしか感じられない メッセージなのだと。
銀花は、またそういうオーラがこれ以上ないほどに よりそって詰まった宇宙である。 (マーズ)
『季刊 銀花』 出版社:文化出版局
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管理者:お天気猫や
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