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読者にとって、リンダ・ハワードは癒し系ロマンス小説と 位置付けられている。 それは、どんな女性読者たちにとって、なのだろうか?
読み始める前には、世間一般のミステリファン、 あるいはハーレクインファンなのだろうぐらいに思っていた。
しかし、五冊読んで、そこにもっと深い理由が見えてきた。 『二度殺せるなら』(加藤洋子訳/二見書房) 『黄昏に生れたから』(加藤洋子訳/ヴィレッジブックス) 『心閉ざされて』(林啓恵訳/二見書房) これら三冊のヒロインは、明らかなACだったのだ。 AC(アダルト・チャイルド/アダルト・チルドレン)、 つまり、アルコール依存の親、その他の機能不全家庭で育てられ、 不健全な生き方のルールを身に付けた成人。 無自覚なまま家庭を持つと、無意識のうちに親と同じ問題を起こす。 ACは何らかの気付きやカウンセリングなどによる以外改善されず、 その回復も長期間にわたるとされる。
『二度殺せるなら』のヒロイン、カレンは、 ベトナム帰還兵の父親に捨てられ、母を親代わりに支えた。
『黄昏に生れたから』のスウィーニーは、 ネグレクトする母に育てられ、性的ハラスメントも受けた。 死者が見えるという特殊能力とともに、夢遊病も発病。
『心閉ざされて』のロアンナは、両親を事故で亡くし、 7歳で生きる居場所を失い、思春期に拒食症をわずらった。 罪悪感にさいなまれ、彼女もまた夢遊病の持病がある。
世間では、彼女たちのように、無自覚のACが ハッピーエンドを迎えることは夢である。 人間関係につまずき、体調の不安におびやかされ、 自分に価値を見出せない。 しかも、無意識のうちに、自分のパターンに符号する ACのパートナーを選んでしまうといわれている。 人口の何割がACなのかは誰にもわからない。 自覚もせず、カウンセリングにも行かなければわかりようがない。 極端な例でないかぎり、自覚しないまま一生を終える人も多い。 とはいえ、世の中に完璧な家庭などなく、誰しも親に 大なり小なり不満をもちながら育っている。 そう考えれば、ACの要素は、実は誰の心のなかにも 潜んでいる不安ではないだろうか。
クイーン・リンダが妖精の杖を振るうのは、そこなのだ。 ヒロインたちの苦悩を、じゅうぶんに読者にわからせた後、 彼女たちを回復へ向けさせる「まともな」大人の男性を 登場させるのである。
そして、ヒロインたちは劇的に変化する。 たとえばスウィーニーは、生れて初めて、 「生きなければ」と太字で思うのだ。
ゆがめられた子ども時代を自覚し、自分のものと呼べる人生、 誰もが与えられている権利を取り戻し、 ほんとうの大人に成長しなおすヒロインたち。 そのきっかけが、愛し、愛される男性である。
自覚しているACにはダイレクトに伝わり、 自分でACだと知らないACでも、 普通の大人といわれる人々であっても、 やはり、このメッセージはとどく。
リンダ自身が、相当に、ACについて勉強していると思うし、 さまざまなパターンのACをヒロインの個性に投げかけることで、 どんな女性のうえにも、幸せになる権利は平等にあるのだと 力強く教えてくれているのだ。
だから私は楽しみにしている。 次はどんなヒロインが登場し、そして癒されるのだろうと。 (マーズ)
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管理者:お天気猫や
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