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ここまでの罵詈雑言を部下はおろか 一般市民に向かって浴びせて良いものか、 偉大なる英国の傲岸不遜な巨体警視、 アンディ・ダルジール(本当はディーイールとか 発音するらしい)これにあり。
レジナルド・ヒルの人気シリーズ『ダルジール警視もの』は 相棒のインテリ青年ピーター・パスコー警部(昇進中)が 一方の主人公でもあって、 それぞれに独立した作品でも活躍しています。 スマートなパスコーのシリアスミステリよりも 下品なダルジールの爆笑ミステリの方が どちらかといえば私は好きかも。 ああ恐ろしい、ここまでオヤジに毒されている。 ダルジールは過去奥さんに逃げられて、 パスコーはシリーズの中で恋人と再会して 婚約して結婚しています。
分厚い『骨と沈黙』の前半はなかなか話が動き出さず、 しばらく警視の罵声にじっと耐えねばなりませんが、 佳境に入ると一転。 殺人犯と睨んだ相手に食らい付いて放さないダルジールと 自信に満ち溢れた犯人との間で劇しい火花が散り、 謎の自殺予告の差出人を探すパスコーが疾走し、 由緒ある街並で住民を巻き込んで催される 聖史劇を背景に物語は終幕へ雪崩れ込みます。
ヒルの作品はドタバタ笑劇の要素が大きいのに 不思議な文学的風格があります。 英国のミステリでは古典からの引用が 付き物となっている感がありますが、 『骨と沈黙』で各章の冒頭に引用される聖史劇は 物語の中で公演が行われる劇の脚本であると同時に 作品内容の象徴にもなっていて面白いですので エピグラムにも要注意。 (ナルシア)
『骨と沈黙』 著者:レジナルド・ヒル / 出版社:ハヤカワ文庫
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管理者:お天気猫や
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