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すばらしい作品には、すばらしい装丁がついてくる。 いつもそう思っているが、この本も、書店で手に取って 迷わず入手することとなった。
でも、すばらしいとわかっているし、 厚さからいっても凝縮されたものにちがいないので、 読むタイミングが大切なはず。 かくして本は1ヶ月ほど、部屋で読まれるのを待っていた。
前置きが長くなった。 ストラリスコはこの本の原題で、空想上の植物の名。 「光草」は、訳者のひらめきによって生まれた名前。 どちらも、センス・オブ・ワンダーな命名である。
いつかの時代、トルコに有名な画家がいた。 画家の年齢は若くもなく老いてもいず、 別な言い方をすれば、最も脂の乗った時代。
その時代に、画家は請われて、ある北方の太守のもとを訪れる。 太守の息子のために、部屋の壁に絵を描いてほしいと。
画家の名は、サクマット。 原因不明の病によって、部屋から出ることのできない 11歳の息子の名は、マドゥレール。
この二人がインスピレーションを与え合い、 白い壁を不思議な絵で満たしてゆく物語。
どこまでも、時間さえも紡いで。
絵が描き進むにつれて、 ページをめくる小さな風が、季節をはらみ、 生命のゆりかごをゆらす。
サクマットとマドゥレールの世界が、 私の座っているこの場所とつながって、 読み終えてもしばらく、旅は終らない。
愛情のまわりには愛情だけがあって、 きっと憎しみの回りにも同じものがあるのだろう。 そして、マドゥレールのいうように、 すべての人のうえに、時間は流れてゆく。
I have a dream house.
それは、山小屋のような一軒の家。 その家にあるはずの、暖炉の前のソファーに座って、 秋の夜、もういちどこの本を読みたい。(マーズ)
『光草-ストラリスコ-』 著者:ロベルト・ピウミーニ / 訳:長野徹 / 出版社:小峰書店
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管理者:お天気猫や
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