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オーストリアの貴族として名高いウサギ一族、 エスターハージー伯爵家の王子様、 その名も略称エスターハージー。
ウサギ一族はチョコレートやケーキ、甘いものばかり 食べてきたおかげで、先祖よりも小型化してしまっていた。 そのことに危機を感じた祖父のエスターハージー伯爵によって、 男の孫たちは全員、外国へ、 大きな体型の花嫁を求め、旅に出されたのだった。
この本を書店で手にとって、パラパラとめくったとき、 「あっ、あのウサギだ!」 と、不思議の国のアリスのごとくふるえた。 ベッドルームの大きな鏡に向かって、豹柄のだぶだぶパンツを はいたウサギがポーズをとっている。 私の持っている今年のゾーヴァのカレンダーに、 その絵があったのだ。
ずっと気になっていた。 あのウサギの背後にある物語が。
そのウサギ、エスターハージー王子の冒険の旅の記録。 30分もかからずに読めてしまう寓話だが、 彼がベルリンへお嫁さん探しに出かけたのは、1989年の春。 秋には「壁の崩壊」が待っているのである。
ベルリンで次々に見舞われる、御曹司育ちの エスターハージーの体験した苦労は、 ちょっと「ぬいぐるみ文学」に合い通じるものがある。 ぬいぐるみでなく、ウサギなので動けるし、 ウサギなのに人と話ができて、 新聞だって読めるエスターハージー。 居場所をさがして、ベルリンの街の半分で、 人間たちに翻弄される。
ウサギたちにとって、「壁」とはなんだったのか? エスターハージーは、念願の、 大きなお嫁さんを見つけられるのか? エスターハージーがしたように、 自分の種族の特技を活かせばきっと、 どんなウサギだって 幸せにたどりつけるはずだ。
さて、かくいう私たちも、ひょっとして先祖より どこかが小さくなってはいないだろうか?(マーズ)
『エスターハージー王子の冒険』文:イレーネ・ディーシェ、ハンス・マグヌス・エンツェンスベルガー / 絵:ミヒャエル・ゾーヴァ / 共訳:那須田淳、木本栄 / 出版社:評論社
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管理者:お天気猫や
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