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先日電車の中で、 この本を一心不乱に読んでいる女性がいた。 ついその女性の側に行って、 「それ、すごくおもしろいですよ。」と言いたくなった(^^;
宮部みゆきのミステリというのは、 どれをとっても面白いのが当たり前だから、 (大変、贅沢なことではあるが) 当たり前のことには特に感慨も持たず、 つい、さあっと読み流してしまう。 その中でも、この「蒲生邸事件」は、 “当たり前”の当たりの本の中の大当たりであった。
ホテルの火災に巻き込まれた受験生の尾崎孝史。 同宿の男性に助けられ降り立った地は、 昭和十一年二月二十六日の帝都。 まさに二・二六事件前夜にタイムスリップしていた。
日本史でかつて勉強した程度で、 記憶の向こうに薄っすらとあるだけの 二二六事件が、これから目の前で起きようとしている。 教科書の中や戦争映画でしか見たことのない 何をとっても遠かった時代であったが、 当時の市井の生活の描写が非常にリアルだ。
なかなかに読み応えのある一冊で、とても満足している。
宮部みゆきをほんとうに凄いな、と思った。
構成要素としては、
1.おどろきの、SF時間旅行者もの
2.ぜいたくなことに、昭和の暗部に触れる歴史物
3.もちろん、ミステリ
これらの要素が美しい綾を成す一冊。(シィアル)
※ 二・二六事件
1936年2月26日未明、「昭和維新」の実現をはかって、皇道派青年将校22名が下士官・兵1400名余を率いて起こしたクーデタ事件。反乱は、29日に鎮圧され、首謀者や理論的指導者の北一輝らは死刑となる。皇道派関係者は大量に処分され、統制派が実権を掌握。岡田啓介内閣は倒れ、軍の政治的発言権が強化された。
『蒲生邸事件』 著者:宮部みゆき / 出版社:文春文庫
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管理者:お天気猫や
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