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グリーン・ノウのシリーズ三作目。 今回はちょっと感じがちがっている。 主人公だったトービー少年が出てこないのは ちょっとさびしい。 オールドノウ夫人も遠くへ旅に出て留守、 かわりにこの屋敷を夫人から短期間借りたのが 巨人族の研究家、モード・ビギン博士。 3人の子どもたち(博士のではない)が、 グリーン・ノウの館を網の目のようにとりまく川の水路を たどって経験する、奇想天外な夏の冒険物語。
主人公はモード・ビギン博士の姪の娘、11歳のアイダ。 そして、博士の厚意で施設から寄こされた中国人の孤児ピンと、 ロシア系の少年、オスカー・スタニスラウスキー。 女の子1人と男の子2人の子どもたちは、すっかり意気投合し、 夏休みの日々を、ひたすら川遊びして過ごす。 博士も同居人のミス・シビラ・バンもいそがしくて、 子どもたちにかまっている時間はないのを幸いに。
これまでの作品では、館を通じて時間を超えた過去と現在の 子どもたちが出会ったのだが、 今回は、夢のなかでしか起こりえないような ファンタジックな存在との出会いが 次々と起こる趣向。
イギリス全土にはりめぐらされた水路は、 高低差を調整するゲートもあって、 ハウスボートでゆったりと旅をすることができる。 グリーン・ノウにあるのも、そんな川。
グリーン・ノウをとりまく川の不思議な世界に登場するのは? 表紙のイラストにもなっている「世捨て人」、 心やさしい巨人族や、空想上の動物たち。 魔法をかける、かやねずみの巣。 夏のあいだずっと、3人の、お国柄もゆたかな子どもたちは 胸おどる冒険にあけくれる。 それは、早朝であったり、夜の川辺であったり。 大人になってしまった心には、 どうしてもとどかない「無限」がそこにはある。
夏休みには必ず終わりがくるけれど、 子どもたちは一生、夏休みの思い出をかかえていられる。 そういう夏休みは、大人への階段を登りつつある この子たちにとっても、 二度とないのかもしれないのだ。
さいごに、とてもうれしかった場面。 飲み物をいっそうおいしく感じるために 目を閉じて味わっていたアイダの姿。 子どもの感覚にとても近いこの遊びは、 しようと思えばいつでもできる。 すぐにでもすることができるかどうか?
ものわかりがいいように見えて、本質が見えない 大人になりかけたときには、とくに有効かもしれない。(マーズ)
『グリーン・ノウの川 グリーン・ノウ物語3』 著者:L・M・ボストン / 訳:亀井俊介 / 出版社:評論社
2000年09月28日(木) 『ハサミ男』 &『弁護側の証人』
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管理者:お天気猫や
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