HOME*お天気猫や > 夢の図書館本館 > 夢の図書館新館

夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2001年06月22日(金) --

TOP:夢の図書館新館全ての本

『待ち暮らし』

医者の林(リン)は、意に添わぬ結婚をした郷里の妻との 離婚が成立するのを18年、待った。 看護婦の曼娜(マンナ)は、林との未来を信じて、18年待った。 林の妻、淑玉(シュエイ)は、夫のやさしさを18年、待った。

そして18年の後、何が変わったか? 何が失われ、何が得られたのか? そんな疑問の答えを想定しながら、ページをめくる。

原題は"Waiting"、中国出身の作家ハ・ジンが 米国に渡り、英語で書いた小説の翻訳。 『待ち暮らし』というタイトルは秀逸で、 待っているのは林と曼娜だけなのかと思うのだが、 本当の意味で待つことの重さを知っているのは 最後には離婚される纏足の妻であり、彼女だけは 待つことで何かを得たように思われる。

この物語は男性である林を主人公にして描かれているが、 読者の多くはおそらく、いつのまにか女性二人の視点に立って、 林のあずかり知らぬ内情を手にし、焦燥するだろう。 「そんな言い方はないだろう」と思いながら。

3人を取り巻く全世界、中国という強大な国の空気も 狂気も熱情も、映画のように自然に入ってくる描写。 文革当時の中国で、建前のモラルがいかに強力だったか、 そのために費やされた18年でもあるのだった。

待つ身は長い、それでも 待ち暮らす間は楽しい─夢がさめるまでは。

本書は全米図書賞、PEN/フォークナー賞を受賞。 中国ではいまだ、出版されていないという。(マーズ)


『待ち暮らし』 著者:ハ・ジン / 出版社:早川書房

>> 前の本蔵書一覧 (TOP Page)次の本 <<


ご感想をどうぞ。



Myエンピツ追加

管理者:お天気猫や
お天気猫や
夢図書[ブックトーク] メルマガ[Tea Rose Cafe] 季節[ハロウィーン] [クリスマス]

Copyright (C) otenkinekoya 1998-2006 All rights reserved.