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医者の林(リン)は、意に添わぬ結婚をした郷里の妻との 離婚が成立するのを18年、待った。 看護婦の曼娜(マンナ)は、林との未来を信じて、18年待った。 林の妻、淑玉(シュエイ)は、夫のやさしさを18年、待った。
そして18年の後、何が変わったか? 何が失われ、何が得られたのか? そんな疑問の答えを想定しながら、ページをめくる。
原題は"Waiting"、中国出身の作家ハ・ジンが 米国に渡り、英語で書いた小説の翻訳。 『待ち暮らし』というタイトルは秀逸で、 待っているのは林と曼娜だけなのかと思うのだが、 本当の意味で待つことの重さを知っているのは 最後には離婚される纏足の妻であり、彼女だけは 待つことで何かを得たように思われる。
この物語は男性である林を主人公にして描かれているが、 読者の多くはおそらく、いつのまにか女性二人の視点に立って、 林のあずかり知らぬ内情を手にし、焦燥するだろう。 「そんな言い方はないだろう」と思いながら。
3人を取り巻く全世界、中国という強大な国の空気も 狂気も熱情も、映画のように自然に入ってくる描写。 文革当時の中国で、建前のモラルがいかに強力だったか、 そのために費やされた18年でもあるのだった。
待つ身は長い、それでも 待ち暮らす間は楽しい─夢がさめるまでは。
本書は全米図書賞、PEN/フォークナー賞を受賞。 中国ではいまだ、出版されていないという。(マーズ)
『待ち暮らし』 著者:ハ・ジン / 出版社:早川書房
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管理者:お天気猫や
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