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姉妹のいない私にとって、 リカちゃんというのは、 一番最初の、一番身近な女の子のお友だちのひとり。 正確には、リカちゃんのお友だちの 「いずみちゃん」が一番のお気に入りで、 長らく、自分の分身だった。 旅行用トランクにいっぱい、 リカちゃんファミリーと、たくさんのお洋服を持っていた。 リカちゃんハウスだって持っていた。 いつのまにか、リカちゃんファミリーの大所帯に、 なぜだか、お雛様たちまで、混ぜ込んで、 お人形たちの物語と共に成長していった。
梨木香歩の世界は、 私の幼年時代と重なるものが多い。 多分、同世代で、 もしかしたら、私と同じように、 おばあちゃんっ子だったのかもしれない。 穏やかで、あたたかな祖母の愛情。
「いいお人形は、吸い取り紙のように感情の濁りの部分だけを吸い取っていく。・・・(略)・・・人形遊びをしないで大きくなった女の子は、疳が強すぎて自分でも大変。積み重ねてきた、強すぎる思いが、その女の人を蝕んでいく。」(引用)
自分のお人形を持っていない姪っ子たちに、 慌てて、リカちゃんを買いに行った。 考えてみれば、リカちゃん以前にも、 私には、私の分身がいた。 いったい、いつ別れ別れになってしまったのか、 どうしてもわからないけれど、 「たあちゃん」という、抱き人形を持っていた。 ある雨の日の保育園へのお迎えの時、 母は、傘と一緒に、お人形の包みを持ってきてくれた。 思いがけないことで、 雨で薄暗い、保育園の玄関が、 そのお人形の喜びの分、明るく照らし出されて、思い出される。
おばあちゃんが、ようこちゃんにプレゼントしてくれたお人形は、 リカちゃんならぬ、古い抱き人形のりかさん。 りかさんは、ほんとうに良くできたお人形で、 人ばかりでなく、悲しい思いにとらわれたままの 「ひとがた」としてのお人形の心も、浄化していく。 お人形たちの持つ物語は、決して、楽しい想い出ばかりではない。 哀しいを通り越し、無惨とも言えるほどの、 つらい物語だってあるのだ。 古いお人形を恐ろしく思うのは、 お人形の過去が怖いから。 過去に囚われているかもしれない、 お人形の想いがせつなく、悲しすぎるから。
たあちゃんとの別れ、 回りからせがまれ、不本意に譲り渡したリカちゃんたち。 イージーであるが、「うさこう」と名付けて、 どんな時でも、連れ回った、手のひらにのるウサギのぬいぐるみ。
こうやって、思い出した時、 ふわりと日だまりのようなあたたかさをくれるから、 やっぱり、お人形たちは、今でも生きているのかもしれない。 そうやってずっと、私の感情の濁りを、 吸い取り続けてくれているのだろう。(シィアル)
『りかさん』 著者:梨木香歩 / 出版社:偕成社
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管理者:お天気猫や
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