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怒らないでね。
のっけから何を言い出す、とお思いでしょうが、 だって絶対全国のミステリファンの中で これを読んで怒った人が大勢いるはずだもの。 どういうふうに言ってもネタばれ気味になってしまうのですが、 『ハサミ男』で背負い投げを思いきり決められて 『美濃牛』で技ありを取られて 今度こそリターンマッチだ!と帯を絞め直している方は 悪いことは言わない、お止めなさい。 相手が立っている場所は見た通りの試合場ではないのです。 古典ミステリを読んだことがないために、 いわゆるミステリの作法を逸脱してしまう若い作家はいざしらず、 前作『美濃牛』で示されたように殊能氏の場合は 古典に精通している上での仕業ですからタチが悪い(笑)。
海のものとも山のものともつかなかった驚異の新人も 作家としての力量を世間に納得させて安心したのか 今回はずいぶん普通であっさりしているなあ、 出て来る食べ物はやっぱり小技が効いておいしそうで、 マニア受けジョークも遊びも軽い感じだし、 息の長い安定した作風を目指すつもりかな、 (でもやっぱりそう見せ掛けて何か企んでいるに違いない) ──と思ったら。
やっぱり来た来た! そうか、今回の「遊び」の本命はコレか! と膝を叩いてさんざん笑ってしまった後から、 すうっと不安も感じてしまうのです。
三作目でこれをやっちゃって‥‥だ、大丈夫?(ナルシア)
『黒い仏』 著者:殊能将之 / 出版社:講談社ノベルス
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管理者:お天気猫や
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