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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2000年12月14日(木) --

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『ユング』

無意識界の探究者ユング。 力強く父性を強調するフロイトに比べて 内向的で東洋思想に親和性があって そのうえ神秘的なイメージのあるユングは、 現代日本では専門の研究家以外にも 心理療法に興味を持つ人々から オカルトファンに至るまで、幅広い人気を得ています。

ユングが長らくその業績を過小評価されていたのは 袂を分ったユングの事を快く思わなかった フロイトの弟子達の高圧的な態度もあったのでしょうが、 まずなんといっても文章の上手なフロイトに比べて ユングの著作が「何が言いたいのかわからない」、 表現の仕方がひどく下手だったから、 というくだりが納得です。 たしかにフロイト自らの手になる入門書は 私達全くの門外漢でも興味深く読めますが、 ユング本人の思考はその道の研究者に解説してもらうか、 誤解を覚悟で具体的な例を持ち出して貰わないと 素人にはまるきり意味不明(笑)。 ユング派は「無意識」の表現するものを 表層的に理解する事を怖れてパターン化する事を避けるので、 なかなか面白い「読み物」は出来ないという事情もありそうです。 つまるところ「言葉では表現できない」世界なのですから。

著者のストー自身はユング派ではないそうで、 ユングその人を外側から捉え、 高く評価されるべき思想、発展性の大きい部分、 逆に共感できない部分、不必要な部分などを示して その思想を外部の者にも理解しやすいように 要領良く紹介しています。 本邦ユング派のさきがけであり 夢による心理療法の第一人者である 訳者の河合隼雄先生も、親切な注釈を加えたうえで、 公正な立場で上手くまとめてあると太鼓版。(ナルシア)


『ユング』 著者:A・ストー / 出版社:岩波現代文庫

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