今日のような澄んだ青い空を見ると
30年近く前の嫌な事件を思い出す。
それは、当時私が勤務していた会社の近くで起こった。
自殺願望の女子高校生がビルの屋上にぼーっとたたずんでいた。
それに気付いた人たちで、ビルの下には黒山の人だかりが出来ていた。
女の子はなかなか決心が付かず、1時間も飛び降りようとしては止め
飛び降りようとしては止めを繰り返していた。
やがて、警察やらテレビカメラやらも出て大騒ぎになって来た。
突然、野次馬のオヤジが叫んだ。
こら〜!いつまでも夕涼みしてんじゃねぇぞぉ〜
可哀想に飛び降りあぐねていたその女子高生の体は、そのオヤジの言葉に背中を押されるように宙に舞った。
弱冠17歳の短い命だった。
死ねば良かったのはあのオヤジの方なのに、
きっとあのオヤジはそんなことも忘れて今でものうのうと生きているに違いないのに。
あのオヤジが叫びさえしなければ、彼女は飛び降りるのを止めたかも知れないのに。
一瞬にしていろいろなことが私の頭の中を駆け巡った。
次の日彼女の家の前を通ったら、りっぱな献花が所狭しと並べられていた。
残された家族の背中は本当に痛々しかった。
今日のように澄んだ空を見上げると、あの日の嫌な記憶がまた蘇って来る。
本当はもっと生きて欲しかったのに。
死ぬべきはあのオヤジだったのに。
胸がきゅんと締め付けられて、どうにもいたたまれなくなってくる。