安心毛布
    

2000年09月08日(金) ダブルパンチ

今日はちょっと趣向を変えて小説風に…

業界の中では、最大手に入る某スーパー。
夏休みも終わり、店内には客の姿もまばらにしか確認できない。
ましてや、平日とくればなおさらのこと。
こんな日は、マメに商品整理をして閉店後すぐに帰れるようにした方がいい…
そう思いながら、ゆんは黙々と婦人服を片付けていた。
単調な作業だけに、しばらく没頭していると周囲の雑音が遠くなっていくことがある。そして、まさにそうなろうかという瞬間、視界の端から近づいてくる客の姿に気づいた。
手を止め、なにげにそちらを向くと「すいません」と客から声をかけてきた。
「はい、いらっしゃいませ♪」
作り笑顔100%で答えるゆん。
黒いセーターに黒いスカートを合わせた、ちょっと大柄な30代くらいのその女性客は、ついと近寄ると「アリエールっていうお店はどこですか?」と真顔でゆんに尋ねた。
100%の笑顔を貼り付けたまま、客から視線を外して遠くを眺めながら考えること数秒。
「……日用雑貨ですか?」
そう聞き返しながら、ゆんの頭の中では♪アリエ〜ル〜♪という例のCMソングが回転を始めていた。しかし、客は「服屋さんです」と、やはり真顔。
60%くらいに落ちた笑顔でゆんが考え込むと、客は鞄の中から用紙を出してきて「ここです」と示した。
[ エステール 0794−××−×××× ]
「あ…」と言ったまま気まずそうな顔をした客を置いてゆんは店内の案内板まで歩き出した。
案内板でエステールさんを探し出すと、店舗名の上に小さく[宝石]と書いてある。ダブルパンチをくらった客は、もぐもぐと言いながらエステールさんへ向かい歩いていった。
いいネタが出来た…とほくそえみながら、ゆんは再び商品整理に没頭し始めた。

あ〜…かえって時間がかかった(^^;;