昔はこんな不細工なネコをよく見かけたものだ。 だが、最近このへんはノラが少なくなったせいもあって、あまりこういうネコを見なくなった。
さて、このネコの写真だが、昼間折尾の鷹見神社で撮ったものだ。 神社の階段を上っていくと、ちょうど踊り場の所で、大の字になって寝ていたのだ。 そこで、ちょっとちょっかいかけてやろうかと思った。 しかし、参拝前である。 畜生を触った手で、神様を拝むなんてもってのほかだ、と思い直しやめておいた。
境内には本殿ほか、いくつかの神社があったので、一つ一つ拝んでいった。 そのため、すべてが終わるのに30分ほどかかった。 もちろんその間はネコのことを忘れていたのだが、参拝を終えてから、 「そういえばさっきネコがいたなあ」、と思い出した。
しかし、いくら何でも30分も経っている。 さすがに、もうネコはいないだろうと思っていた。 ところが、参拝を終え、階段を下りてみると、まだいるではないか。 お目覚めしたばかりなのか、前足で顔をしきりになでていた。 ネコは非常にのんびりしていたが、ぼくの足音が聞こえると、急にハッとした表情に変わり、ダッと逃げ出した。 ところが、ぼくが「チ、チ、チ」と舌打ちして呼び止めると、なぜかネコは立ち止まった。 ぼくはゆっくり近づいていった。 でも、逃げない。
ぼくは胸ポケットから、おもむろに携帯を取りだして、カメラモードにした。 その間もネコはジッとしている。 そこで、ちょっと触ってやれと手を伸ばした。 すると逃げようとした。 しかたないので触らずに、カメラを向けた。 「えっ?」 このネコ、カメラを向けるとポーズを付けたのだ。 まあ、ポーズと言っても座るだけだが。 それでもぼくが撮っている間は、大人しく座っていた。
「これで慣れただろう」、撮り終えた後、ぼくはそう思ってもう一度手を伸ばしてネコを触ろうとした。 だけど、やはりダメだった。 ネコは階段を駆け上がって行った。
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