2007年07月10日(火) |
ぼくはラッキーですよ |
十数年前、まだ前の前の会社で働いていた頃だ。 その頃は毎週火曜日が休みで、その前日月曜日はいつも飲みに行っていた。 行きつけのスナックで、歌をうたったり、人の相談に乗ったり、激論を戦わせたりと、けっこう充実した時間を送っていた。
ある時、その店で初めて会った人と意気投合し、一晩中語り明かしたことがあった。 彼は、今で言うIT企業の社長だった。 その日店は満員だった。 ぼくが店に行くと、空いていたのは彼の席の隣だけだった。 ぼくがそこに座ると、彼はぼくの方を向いて、 「あのー、しんちゃんですか?」と言った。 「はい、そうですけど」 「お噂はいろいろ聞いています」 「はあ…」 ということで、ぼくたちはしゃべり始めた。
その頃ぼくは大手の専門店にいたので、仕事絡みの話かと思っていたら、そうではなかった。 その人は自分のやっている仕事の内容を話したはが、それ以外はあまり仕事の話をしなかった。 そのほとんどは、自分の生い立ちや考え方に費やしていた。
話を始めてしばらくして彼は、「しんちゃんってラッキーでしょ?」と聞いてきた。 ぼくはそういう質問を受けたのは初めてだったので、どう受け答えしていいかわからなかったが、とりあえず、「ああ、おれはラッキーですよ」と答えておいた。 すると彼は、「やっぱりね」と言った。 「何で?」と聞くと、「最初見た時から、運の強そうな人だと思った」と言う。
その会話のあった後で、そのことをいろいろと考えていたが、どう考えても、ぼくはラッキーとしか思えなかった。 具体的にどうラッキーかはわからなかったが、とにかくそこまで不可なく生きてこれたし、そこまでの人生に後悔するとことがなかったからそう思ったわけだ。 ということで、彼には嘘をつかずにすんだのだった。
おそらく今でも、同じ質問を受けたら、その時と同じように「おれはラッキーですよ」と答えるだろう。 ここまで不可なく生きてこれたし、ここまでの人生に後悔してないからだ。
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