小学生の頃、一度だけ大雨のために休校になったことがある。 夜中から降り続いた雨が、朝になっても降り止まず、在校生の何人かの家が被害に遭ったらしいのだ。 休校が決まったのは、朝の8時過ぎで、すでにぼくたちは学校に向かっている途中だった。 傘をさした小学生が、ゾロゾロとこちらに向かって歩いてくる。 「どうしたんか?」と聞くと、「今日学校休みになったぞ」と言うではないか。
学校と思っていたのに休校になったので、嬉しいことこの上もなかったが、大雨が降っているので外には出られない。 当時は電話が普及してなかった時代で、友だちと連絡をとることもできない。 テレビではくだらんメロドラマをやっているので、見る気も起きない。 すでにその週の少年サンデーは読んでいたし、一人で遊ぼうにもゲームもないしで、実に退屈だった。
「あーあ、こんなに退屈な休みなら、学校があったほうがよかった」と思っている時だった。 あれだけ降っていた雨がピタリと止み、晴れ間まで出てきたのだ。 時間は10時半ぐらいだったと思うが、それから広場に子どもが 次々と出てきた。 とはいえ広場は雨でぬかるんでいる。 では何のために出てきたのかというと、プラモデルで遊ぶためある。 何のプラモデルかというと、軍艦や潜水艦だ。 広場の周りには排水溝があったのだが、そこまで水が汚れてなく、浅かったので、軍艦や潜水艦を浮かべるのに都合がよかったのだ。
ぼくのお気に入りのプラモデルは、当時マンガで大ヒットしていた『サブマリン707』だった。 遊ぶ場所が場所なだけに、コンクリや石にぶち当たって、すぐに壊れる。 そのため、もっと頑丈なのをとは思っていただが、なぜかいつも同じのを買い直していた。 最初は細かいところまで丁寧に作っていたが、そのうち面倒になり、細かいところは作らないようになった。 さらに本体を固定させるために、接着剤ではなく輪ゴムを使うようになった。
ところで、排水溝で遊んだ後、家に持って帰った潜水艦をどうするのかというと、風呂場に保管しておいて、風呂に入った時にまた遊ぶのだ。 保管すると言っても、洗面器の中にポンと入れておくだけだ。 プラモを洗った記憶などないから、きっと風呂水は汚れていただろう。
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