朝方電話がかかった。 「誰か、こんな朝っぱらから」 と受話器を取ると、「もしもし」というおばさんの声がした。
「はい」 「T事務所ですけど、お母さんいらっしゃいますか?」 「えっ?」 「T事務所ですけど」 「どちらにおかけですか?」 「695のXXXXですよ」 「うち違いますよ」 「えっ、でも695のXXXXなんですよ」 「うちは692です」 「あのー、お母さんは…?」 「だから違います」 「どういうことですか?」 「どういうことも何も、番号を間違ってるんですよ」 「でも、695ですよ」 「だからうちは692と言ってるでしょ」 「あっ。ああ、間違いなんですね。ハハハ。では」
691とか592とかの間違いならたまにあるが、695というのは初めてだ。 きっとボタンの1段目と2段目を間違えて押したのだろう。
さて、時期が時期だから、事務所と言えば選挙事務所だと思う。 おそらくおばさんは電話番号695の人に、支援のお願いの電話をしたのだろう。 だが、このおばさんには今時のボタン式の電話は不向きなのだ。 T事務所はこのおばさんのために、黒電話を用意してやるべきである。 そうしないと、何度も同じ失敗を繰り返すだろう。 なぜなら、このおばさんは指が太いはずだからだ。 それに思い込みも激しく、自信家ときているから、間違うたびにトラブルを起こすに違いない。 悪いことは言わんから、すぐにでも黒電話を用意してやるべきだ。
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