頑張る40代!plus

2007年05月29日(火) 大字蒲原

30年前の冬に、ぼくはデパートでアルバイトをしていた。
商品センターでお歳暮を地区別に振り分ける仕事だった。
生まれ育った場所なので、特に地名や地理を覚える必要もなく、比較的楽な仕事ではあった。
とはいえ、時にはわからない地名を書いた伝票が回ってきて、困ったこともある。
しかし、大概は区画整理前の地名であったり、バス停などにある地名だったので、古い地図を調べたり、誰か知っている人がいたりして解決していた。

ところが、一回だけ、誰に聞いてもわからない地名に遭遇したことがある。
『八幡西区大字蒲原』
こんな地名は聞いたことがない。
古い地図にも載ってないし、『蒲原』というバス停もない。
年配のチーフに聞いても、「そういう地名は聞いたことがない」と言う。
しかも、悪いことに届け先の電話番号を書いてない。
おそらく住所を間違えているのだろうと思い、送り主に尋ねることにした。

「この届け先は、大字蒲原でいいんですか?」
「ええ、いいですよ」
「八幡西区ですか?」
「はい、そうですよ」
「すいませんが、地図調べてるんですけど、こういう地名が見あたらないんですよねえ」
「でも、郵便物はそれで届くよ」
「どの辺になるんですか?」
「いや、死んだ親の知り合いなもんで、自分も知らんのよね」
「電話番号はわかりませんか?」
「わからん」
「そうですか…」
「郵便局に聞いてみてよ」
「わかりました。そうします」

郵便局にはチーフが電話してくれた。
「おい、わかったぞ」
「どこでした?」
「今の青山」
「青山ですか」
「それ、かなり昔の住所らしいぞ」
「いつ頃のですか?」
「郵便局の人の話では、戦前とか言いよったけど」
「戦前ですか。じゃあわかるわけないですよね」
「わしゃ知らんかったぞ」

青山は高級住宅地で、ぼくもいつかは家を建てたいと思っていたところだが、その旧地名から察するに、昔は湿地で蒲がたくさん生えていたのだろう。

上の話は、今朝急に思い出した話である。
何で今頃、こんな昔話を思い出したのかと考えていたのだが、どうやら坂井泉水の死と関係がありそうだ。
坂井泉水の本名は、蒲池幸子というらしい。
「蒲池、蒲池、そういえば…」となったのだと思う。


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