夕方、嫁ブーと近くのコンビニに歩いて行っている時だった。 後ろを歩いていた嫁ブーが突然、 「しんちゃん!」 と大きな声を上げた。 振り向くと、嫁ブーはぼくの横で信号待ちしていた車を指さした。 車を見てみると、その中で、ぼくに手を振っている人がいた。 白髪頭でメガネをかけた人だった。 必死に手を振るので、ぼくもそれに釣られて手を振って、笑顔で返した。 それからすぐに信号がかわり、車は発進した。
店に入ってから、ぼくは嫁ブーに聞いた。 「おい、あれ誰か?」 「誰って?」 「さっきの車の人」 「えっ、知らんの?」 「知らん」 「一瞬やったけ、顔がよくわからんかったんやないと?」 「いや、どう考えても知っとる顔やない」 「じゃあ、知らん人に手を振ったわけ?」 「おう。反射的にそうした。じっくり見る暇なかったしの」 「あの車に見覚えないと?」 「ない」
さて、誰だったのだろう?
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