先週の木曜日の午前中のことだった。 嫁ブーと二人で、近くの喫茶店にモーニングを食べに行った。 食べ終わったあと、そこでイスに寄りかかって新聞や本を読んでいたのだが、その姿勢が悪かったのか、背中に違和感を覚えた。 「おかしい」と思って体を前後左右に揺すってみた。 その瞬間だった。 激痛が走ったのだ。 背筋が攣ったような痛みで、その時は息も出来ないほどだった。
しばらくして何とかその痛みは治まり、何とか家に帰ることは出来たのだが、体を捻ったりするとやはり痛い。 その状態はその後も続き、寝返りをうった時にその痛みで目を覚ますこともある。 そういう状態がいつまでも続くと、また寝不足になり、仕事にも差し支えるし、また尿潜血などの諸症状が出ると困る。。 そこで意を決して、整骨院に行くことにした。
午前中に買い物をすませ、整骨院に行ったのは午後からだった。 「今日はどうされましたか?」 「はあ、背中が痛いんです」 「何かされたんですか?」 「いや、座っていただけです」 「座っていて背中が痛くなったんですか?」 「はい…」 「よほど座り方が変だったんでしょうねえ…」
そう言って先生は、ぼくの背中を軽く押さえた。 「痛みますか?」 「ええ、ちょっと」 「特に骨がずれているとかはなさそうですが…」 「そうですか」 「他に痛いところとかありますか?」 「腰ですね。慢性化してますから」 「腰痛ですか。ちょっとうつぶせになって寝てみてください」
言うとおりにうつぶせになって寝ると、先生は背中の時と同じように軽く腰を押さえた。 「いつから痛かったんですか?」 「20年以上前からです」 「えっ、20年以上も前なんですか?」 「ええ」 「何か重たい物を持つような仕事なんですか?」 「そうです。大型テレビとかエアコンの室外機とか」 「ああ、電気屋さんですか」 「ええ。電気屋関係の人は、ぼくと同じように腰の悪い人が多いですよ」 「へえ、そうですか」 「ええ。業界では電気腰とか言ってます」 「電気腰ですかぁ、初めて聞きました」
先生はしばらくぼくの腰を揉んだあとに言った。 「別に悪くないですよ」 「えっ?」 「骨は正常ですよ。もし痛いのなら、それはストレスじゃないんですか?」 「ストレスで腰痛になるんですか?」 「ええ、なりますよ。ストレスが腰の神経を圧迫するんですね」 「そうなんですか」 ストレスが腰の神経を圧迫するなんて初めて聞いた。
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