何日か前にヒロミに頼まれた物がある。 シャンプーや洗顔フォームである。 たまたまうちの店が安売りをやっているのを聞きつけ、ぼくに電話してきたのだ。 「しんたさん、今安売りしよるんやろ?」 「ああ。やっとるよ」 「じゃあ、今度来るときでいいけ、シャンプーとボディソープと洗顔フォーム買ってきて」 …ということで、今日の休みを利用して、ぼくと嫁ブーはヒロミ宅に行った。
ヒロミと会うのは、昨年末(12月23日)の忘年会以来だ。 まあ、久しぶりという感じでもなく、またしょっちゅう電話やメールでやりとりしているので、これといって目新しい話はなかった。 だが、一つだけおもしろい話を聞いた。 ヒロミの知り合いの子が、今度高校に進学するらしいのだが、そこで出た話である。
「知り合いの子が成績が悪くて、入れる高校がないらしいんよ」 「福岡市内に電話一本で入れる高校があるらしく、地元じゃ一流高校と呼ばれよるらしいぞ。そこ受けたらいいやん」 「そういうのやったら、この辺にもあるよ」 「どこか?」 「×高」 「ああ、×高ね。やっぱり電話一本でOKなんか?」 「いや、いちおう試験はあるらしいんやけど…」 「じゃあ、電話のほうが簡単やないか」 「でも、電話やったら、住所とか電話番号を言わんといけんやろ?」 「そりゃそうよ」 「×高はね、自分の名前が言えたらいいんよ」 「えっ、それで合格なんか?」 「うん」 「おー、それはすごい。超一流高校やのう」
帰る道々考えた。 自分の名前を言うだけで合格する高校というのは、いったいそういう生徒たちにどういう教育を施しているのだろうか? いちおう、学習指導要領に乗っとった教育を施しているのだろうが、果たして名前だけしか言えない生徒は勉強について行けるのだろうか? 入学は出来ても、何年かかっても2年に進級できないのなら話にならない。
まさか、最近捕まった某IT会社社長を真似て、「×高は入学することに意義がある」などと教え、さっさと自主退学の方向に追いやっているのではないだろうか。 その際、ドラゴン桜の桜木先生みたいに、「おまえたちは東大に行け!」と言っているのかもしれない。 もちろん勉強について行けない彼らは、次第に学校に行くのが嫌になってくる。 そして、あらかじめ用意した退学届けを突きつけ、彼らが唯一出来ることをさせて、退学させているのかもしれない。 彼らに唯一出来ることとは、言うまでもなく、名前を書くことである。
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