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2006年01月19日(木) 浪人時代にやった占い(前)

(1)夢占い
19歳から20歳にかけて、ぼくはよく夢判断をしていたものだ。
夢判断とはいっても、この頃はすでにフロイトなどの難しい本は読んでなく、別に深層心理の観察などをやっていたわけではない。
では、どんな夢判断をやっていたのかというと、それは占いである。
つまり、夢占いをやっていたわけだ。

何度も書いているが、19歳から20歳というと、ぼくは浪人生活の真っ最中だった。
まさに孤独と焦燥の毎日で、いつも何かいいことがないかと思っていた。
そのいいことを、夢に求めたのだ。
あの頃よく見ていた夢は、海の夢だった。
そこで、『夢占い』なる本で海を調べてみると、「恋の成就」などと書いてあった。
だいたい、家に引きこもっているような人間が恋の成就などするはずもないのだが、その時は真剣にそうなるものだと思っていた。
そのためにぼくは、暇があると電話の前に座っていた。
好きな子からの電話を待っていたわけである。
しかし、かかってくるのはいつも違う女性からだった。

「しんたさんですか?」
「はい」
「今、英会話の教材の紹介をやっているんですけど…」
と言って、その女性はうだうだと教材の説明を始めた。
そして、ようやく話が終わったと思ったところで、彼女はこう切り出した。
「電話ではわかりにくいと思いますから、直接お話したいんですけど」
「えっ?」
「明日、お会いできませんか?」
人が恋の成就の電話を待っているのに、何が英会話だ。
むかついたぼくは、「別に会いたくない」と言って電話を切ったのだった。

こういう電話はまだいいほうで、ぼくがいない時に高校の同級生を名乗り、こちらから電話させる手口の奴もいた。
こんな勧誘の電話ばかりで、どこに恋愛の成就があるのだろう。
ということで、だんだん夢占いをすることが馬鹿らしくなり、気がついたらやめていたのだった。

(2)奇門遁甲
そういえば、これと前後して、奇門遁甲という一種の方位学もやったことがある。
ちょうど就職を探していた時だった。
何度も何度も面接で落とされるので、ぼくは「これはきっと方位が悪いせいだ」と思うに至った。
奇門遁甲というのは、三国志で有名な諸葛孔明も用いたという占いで、人を思うように動かすことが出来るのだという。
そこでその言葉を信じたぼくは、その本を買って、面接官の心を動かしてやろうと思ったのだ。

「今日は、午前中東方面が吉か。じゃあ、今日は東方面の企業を探そう」
ということで、アルバイトニュースに載っていた、その方面の企業に片っ端から電話し、履歴書を持ち込んだ。
「これで面接官の心を動かせる」とほくそ笑んで、ぼくは面接を受けた。
ところが、心を動かすどころか、始終面接官に主導権を奪われ、あげくにその場で断られたのだった。
面接官は最後に、「君にはこの仕事は向いていない」と言った。
どの面接もこんな調子だった。
結局26回面接を受け、すべて落とされてしまった。
その後ぼくは、社会というのが恐ろしく思えてきて、家に引きこもってしまうのだった。


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