最近ぼくの周りで、「仕事を辞めた」とか、「転職しようと思っている」とか言う人が増えている。
年末のこと。 取引先の人と話していると、彼が急に声を潜めてこう言った。 「この間、ある会社の面接受けたんですよ」 「えっ、会社辞めると?」 「ええ、そうしようと思ってるんです」 「どうして、また」 「うちの会社、危ないんですよ」 「そうは見えんけどねえ」 「表向きはですね。でも、今年は昇給がなかったし、ボーナスも出ないんですよ。実情はかなりひどいです」 「昇給・ボーナスがない。それはきついねえ」 「そうでしょ。で、3月をめどに、いまの会社を辞めようと思って」 「でも、再就職と言ったって、なかなかいい仕事は見つからんやろ」」 「そうなんですよ」
これも年末。 後輩から電話がかかった。 「しんたさん、おれいま無職です」 「えっ、仕事辞めたんか?」 「ええ、リストラにあったんです」 「リストラか…。で、おまえこれからどうするんか?」 「何かいい仕事がないかと思って電話したんです」 「職安、あたってみたか?」 「ええ、いちおう」 「何もないやろ」 「いや、あることはあるんですが、月収が今までの半分とかですからね」 というものだった。 最後にぼくは「まあ、いいところがあったら連絡するけ、期待せんで待っとけ」と言って電話を切ったのだ。 以前は「いい人材いませんかねえ」などと言ってくる人もいて、何人か紹介したこともあるのだが、最近そういうことを言ってくる人はいなくなった。
ぼくが前の会社を辞めた頃は、「キャリアアップしたい」「他のことにチャレンジしたい」といった理由で転職する人が多かったような気がする。 まあ、バブルがはじける前のことだったから、そういう理由も通ったのだろうが、最近はそんな理由で会社を辞める人はまずいないだろう。 ぼくの知る限りでは、ほとんどが上に紹介したような理由で退職した人が多い。
しかも、当時の転職組は2,30代が圧倒的に多かったのだが、最近は40代や50代の人も多くいる。 ぼくの知っている50代の人で、それまでの部長職を捨てて転職した人がいる。 別にヘッドハンティングされたわけではない。 まったく別の業種に就き、年収も半分ぐらいになったという。 そうなることはわかっていたのに、何で転職したのかというと、やはり「会社が危ない」が最大の理由だった。
今のところ、うちの会社も何とか持っているが、この先どうなるかわからない。 会社内でも、そろそろ高齢者を対象にした人員整理の話が出ているようである。 ぼくも来年50歳。 そろそろ心の準備、いや将来の準備をしておかないとならない。
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