正月をどうして過ごそうかと考えていた時に、以前先輩が「休みの日には、いつも極楽体験している」と言っていたのを思い出した。 先輩の言う極楽体験とは、午前中マッサージに行って、それが終わってから温泉に行くというものだった。
ぼくが「休みのたびにそんなことしていたら、お金がいくらあっても足りないでしょう?」と言うと、先輩は「いや、そんなことはない」と言う。
「しかし、マッサージと温泉でしょ。普通マッサージに行くと、安くても3千円はとられるじゃないですか」 「普通はそうやね」 「それに温泉が加わるわけでしょ。マッサージが終わってから行って帰ってこれる場所というと、二日市温泉とか山口の湯本温泉あたりだから、いくら温泉代が安いと言っても、高速代とかガソリン代がかかるわけじゃないですか。そうなると、マッサージと合わせて6,7千円はかかる計算になる」 「6,7千円も遣うわけないやん」 「じゃあ、いくら遣うんですか?」 「千円ぐらいかなあ」 「えっ、千円!?」 「うん」 「どこに行ったら、千円とかで上がるんですか?」 「マッサージは整骨院でやるから、保険が効くやろ。だから100円ぐらいですむやろ」 「ああ」 「あと温泉は、二日市とか山口とかに行かんでも、ちゃんと市内にあるやん」 「えっ、市内?」 「河内」 「ああ、河内か」 河内とは、北九州市唯一の温泉がある場所である。
「あそこはスーパー銭湯と違って、ちゃんとした温泉やろ」 「確かにそうですね」 「しかもあそこは山の中にあるけ、黒川温泉みたいなんよ。で、料金は800円やろ。整骨院代と足すと900円やん」 「ああ、そうか」 「もちろん高速使う必要もないけ、高速代もかからん。それに家から近いけ、時間もかからん」 「なるほど」
それを聞いて、ぼくは真似してみようと思っていた。 だが、いざやるとなると、何か面倒臭くて、なかなか実行出来ないでいた。 正月は暇だし、せっかくだから極楽体験でもやろうかなあ。
ん? あ、そうか。 温泉はともかくも、整骨院は休みじゃないか。 やっぱり、正月はつまらん。
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