2005年07月04日(月) |
ヒロミちゃんがやってきた(その7) |
電話が終わった後ヒロミは、「今の電話、Mリンからなんやけど…」と言って説明をしだした。 Mリンとはヒロミの娘である。 その時、Mリンは彼氏とマクドナルドにいたらしい。 彼氏が何か買おうとしたところ、あいにく万札しか持ってなかった。 そこで、Mリンが「これで払い」と言って、千円札を渡した。 それを受け取った彼氏は、そのお金で支払いを済ませた。 お釣りがあったのだが、彼氏はそれを店員から受けとった後、無意識に自分のポケットに入れてしまったというのだ。 当然お釣りは自分の元に返ってくるものと思っていたMリンには、それがショックだったのだ。 そのはけ口が、ママ、つまりヒロミだったわけだ。
先の電話の内容は、 「ちゃんと『返して』と言いなさい」 「言いきらん」 「彼が忘れとるんやけ、言わんとわからんやろ」 「‥‥。マックシェークがのどを通らん」 「他にお金持ってないんね?」 「あと千円あるけど…」 「ああ、千円残っとるんね」 「言いきらんけ、ママ、帰ったらお金ちょうだいね」 「‥‥」 ということだった。 しかし、お釣り分をママにくれというMリン、さすがヒロミの子らしく、ちゃっかりしている。 そのあと、ヒロミ宛にMリンからメールが届いた。 そこには『くるしいよう』と書いてあった。
その後ぼくたちは『おとぎの杜』で疲れを癒した。 1時間後、そこを出て食事に行った。 その店は豆腐料理で有名な店だった。 ヒロミは窓から店の中をのぞき、その窓の横に座っていた人の料理を見たとたん、ぼくをつつき「しんたさん、あれおいしそうやね。私あれにするけ」と言った。
席に着いき、店員がメニューを持ってきた。 しかしヒロミはメニューを見ずに、ずっと窓の横の人たちの料理を見ていた。 そして小声で「あれなんかねえ」と聞いていた。 ぼくが「『それなんですか?』と聞いてこい」と言うと、「そんなこと言いきらん」と言っていた。 嫁ブーが「ヒロミちゃん何にする?」と聞いても、ヒロミはメニューを見ずに、あいかわらず横の人を見ていた。 「ねえ、何にすると?」 「ボリ、あれ」 「えっ?」 「あれよ、あれ」 そう言ってヒロミは目で横を見て合図した。 しかしその合図、ぼくにはわかるが、横に座っている嫁ブーには見えないからわからない。 「どれね?」 「あれっちゃ」 しかし、「あれっちゃ」と言っても、その料理が何かわからないから話にならない。 結局ヒロミが頼んだのは、別の料理だった。
さて、食事も終わり、門司までヒロミを送って行くことになった。 その途中ヒロミが言った。 「ねえ、しんたさん」 「なんか?」 「今私が一番欲しいものわかる?」 「チーズの乗ったパンか?」 「いや、そんなんじゃなくて…」 「美顔器か?」 「それもあるけど…」 「じゃあ、わからん」 「今私が欲しいのはねえ…」 「何か?」 「あの雑貨屋にあった白いイス」 まだ覚えていたのだ。 ということで、次回はいやでもそこに連れて行かないとならなくなった。(完)
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