頑張る40代!plus

2005年01月30日(日) 歯医者その後(下)

しばらくして先生の手が止まり、ぼくの口元から離れていった。
看護婦さんが来て、「起こします」と言った。
起きるなりぼくは、看護婦さんが「うがいして下さい」という前に、口の中にたまっていた麻酔液を吐き出した。
そして、その後何度もうがいをした。
背後から、「じゃあ、そのままお待ち下さい」という声が聞こえた。

しかし、大の男が歯医者の治療イスに座って、麻酔が効いてくるのをボーッと待っているのも変なものである。
せめてイスを倒してくれたら、居眠りくらいすることも出来るのだが、座っていると何にもすることがないのだ。
出来ることといえば、窓の外を眺めることぐらいだ。
この歯医者の窓は大きいので、外の風景がよく見える。
ということは、逆に外からも中が見えているということだろう。
イスに座ってボーッとしているぼくの姿は、きっとおかしく映っていたに違いない。

さて、時間がたつうちに、注射中から効いていた麻酔がさらに効いてきた。
鼻の下の感覚がなくなり、それが唇にまで降りてきた。
『ちっ、やっぱり唇に来たか』とぼくは思った。
唇に来ると、うがいをする時に締まりがなくなり、そこから水が漏れるからやっかいなのだ。
昔、これで衣服を濡らしたことがある。
そこでぼくは、口を閉じた感覚をつかんでいようと思い、何度も口を開け閉めして、その感覚を覚えることにした。
そして、何とかその感覚をつかんだ。
ところがそれがいけなかった。
唇を動かすことによって、麻酔の範囲が広がってしまったのだ。
その麻酔がどこに影響したのかというと、鼻である。
小鼻のところがジンジンしてきたのだ。
鼻がしびれるなど、生まれて初めての経験である。
その後、治療の最中に何度か麻酔が切れかかり、痛みが走ったのだが、鼻のほうは相変わらずしびれたままだった。

治療は一時間以上かかった。
虫が食っているところよりも、すでに治療していた歯が悪くなっていたとかで、神経を抜いたらしい。
そのために時間がかかったのだ。
終わってみると、前歯には大きな穴が空いていた。
その穴に、先生はセメントのようなものを埋めていた。
それが固まった頃に、「今日は終わりです」ということになった。

家に帰ってから、さっそく鏡で治療した歯を見て、ぼくは唖然とした。
ぼくの歯の色とはまったく違った色のセメントが埋めてあるのだ。
どう見てもおかしい。
ミルキーが前歯の所々にくっついているような感じである。
次の治療の日まで、このミルキー状態でいなければならないのだ。
それを考えると、気が重くなった。
しかし、ミルキーならまだいい。
次回この歯の治療が終わったとして、もし銀歯でも入れられたらどうしようか?
奥歯に銀はまだ許せる。
だが、前歯の銀だけは耐えられない。
ぼくの持つ男の美学に反するのだ。
しびれたままの鼻を押さえて、ぼくはそうならないことを鏡の前で、必死に祈っていた。


 < 過去  INDEX  未来 >


しろげしんた [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加