電子レンジのキャンペーンが終わり、当初の約束通り、ぼくは映像部門に回された。 もちろん電子レンジの時と同じく外回り専門で、相変わらず店にいることは少なかった。 だが、電子レンジの時と比べると、テレビやビデオといった商品は売りやすかった。 次から次と情報が上がってくる上、決定率も高かった。 しかも、その部門は責任者がしっかりしていたおかげで、『テッポー』に走るようなことはなかった。
ある日のこと。 その日は朝からお客さんが多かったせいもあり、ぼくは朝からずっと売場にいた。 午後になっても客足は途絶えなかった。 暇になったのは、ようやく夕方になってからだった。
課長がぼくを呼び、「しんた、今のうちに休憩とってこい」と言った。 ぼくはその言葉に甘えて、「わかりました」と言って休憩室に行った。 すでにその日の個人予算を達成していたので、気が楽だったせいもあり、そこでのんびりとタバコを吸っていた。 そこに、他部門の社員たちがやってきた。 彼らはぼくを見つけると、 「しんちゃん、今日は忙しそうやったねえ」と言った。 「うん」 「かなり売れたやろ?」 「まあまあやね」 「あんたかなり売っとるみたいやけ、こちらに少し回してくれんね」 「それは出来ん」 そんな会話をしている時だった。 店長が休憩室に入ってきたのだ。 店長は何をするでもなく、休憩室の中を見回すと、ニヤッと笑って出て行った。 それを見てぼくたちは、口々に「何やったんかのう。感じ悪い」と言い合った。
休憩時間が終わり、売場に戻ってみると、そこには店長がいた。 何をやっているのかと、遠目で見てみると、どうも売上伝票を探っているようだ。 『何を調べているのだろう?』と気にはなったが、関わると面倒なので、なるべく店長の目につかないところに立っているとこにしようと、そちらの方向に歩き始めた。 その時だった。 後ろから「しんた、ちょっと来い」という、店長の声が聞こえた。 どうやら、ぼくが戻ってきているのに気づいたらしい。 ぼくが店長の所に行くと、店長は、 「おい、おまえ。今日いくら売ったんか」と言った。 「え?」 その日のぼくの売り上げた分は、クレジットばかりだったので、まだ計上してなかった。 それを知らない店長は、ぼく名義の伝票がないのを見て、鬼の首をとった気持ちになったのだろう。
彼は勝ち誇ったような顔をして、 「いくら売ったんかと聞いとるんだ」と声を荒げて言った。 すぐさまぼくは、その日売った金額を、頭の中で計算した。 その間にも、店長はいろいろと悪態をついてきた。 「言えるわけないのう、売ってないんやけ」 「売ることも出来んくせに、休憩とるなどもってのほかやのう」 「おまえはみんなといっしょに談笑できるような身分じゃなかろうが」 「おまえの、いったいどこが優秀なんかのう。おれから言わせればバカだ」 「ほら、早く言わんか。いったい、いくら売ったんか、おっ!?」
|