1ヶ月目の終わる頃に、電子レンジ部門はようやく予算を達成できた。 が、その売り上げの多くはテッポーで占められていた。 配達されない伝票が数多く残っている。 それに伴って、未入金も残る。 そのせいで、とうとう本社からのチェックが入りだした。
ある日、売場の責任者からぼくは呼ばれた。 伝票のチェックをしてくれと言うのだ。 そこで、ぼくは配達されてない伝票を、すべてノートに書き写し、担当者一人一人に「この伝票は大丈夫?」と聞いて回った。 その中には大丈夫な伝票も含まれていたものの、やはり大丈夫でないものが大半で、その金額は翌月の予算の半分以上を占めていた。
翌月、会議の場で店長は、「本社から未配達・未入金の調査をしろと言ってきたぞ」と言った。 そして、「何でこんなになるまで放っておいたんか」と、レンジの責任者を責めた。 おかしいではないか。 元々は店長が「打て」と言い出したことなのだ。 たしかに、店長の指示に「ノー」と言えなかった責任者にも責任はあるが、一番責任を追及されるべきは当の店長なのだ。
しかし普段から「ノー」と言い慣れていない人は、こういう時でも店長の機嫌を損なわないような発言をするものである。 「どうしても売り上げがほしかったもんですから…」 「それについて、何か調査はしとるんか?」 責任者は、「はい」と言ってぼくが調べたノートを取り出した。 それを見て店長は、「こんなにあるんか!」と言って天を仰いだ。 そして「ちゃんと処理しとけよ」と言うと、その後はそのことに触れようとしなかった。
明けて翌月、ひどい数字の連続だった。 だが、それはテッポーの処理をしたためではない。 実際に売れなかったのだ。 店長は相変わらず、レンジの責任者を責め立てる。 が、もうどうしようもなかった。 全体朝礼で店長は、「テッポーの処理はキャンペーンが終わってから考えることにして、今はとにかくレンジの売り上げを作れ!」とみんなに檄を飛ばした。 しかし、従業員は笛吹けど踊らずで、全くやる気を失っていた。 テッポー慣れしてしまっていたため、どうやって売っていいのかわからなくなっていたのかもしれない。
結局、その月のレンジの売り上げは惨たるものだった。 当然それは本社でも、先の未配達・未入金と併せて問題になった。 とうとう店長の管理能力に、「?マーク」が点ったのだった。
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