今年最大の被害をもたらした台風23号だが、こちらではあまり猛威をふるわなかった。 一昨日からあらかじめ空や海の便の欠航を決めたり、学校を休校と決めたりして台風に備えていた。 ところが実際は、暴風雨というよりも、ちょっと強めの雨が降り、それに伴って風が吹いたにすぎなかった。 ぼくは1時間おきに、外の状況を確かめに行っていたのだが、そのたびに「交通機関はともかくも、学校はこの程度の雨風で休みにするんか」と思っていた。
用心に超したことはないが、ぼくたちが学校に通っていた頃には、まず考えられなかったことである。 小学何年の時だったかは忘れたが、一度大雨に見舞われたことがある。 その雨のせいで川が氾濫し、床下浸水の被害に遭った家も何軒かあった。 だが、そういう時でさえ、学校は休みにはならなかった。 大雨の中、長靴を履き、傘をさして学校に行ったものだ。 もっとも、あまりにひどい状況なので、朝礼後に全員下校にはなったが。
あの日、氾濫した川の水を利用して、プラモの潜水艦を浮かべて遊んでいたのを思い出す。 今考えてみると、実に汚い話である。 当時、家の前の川は、ヘドロや工業廃水でひどく汚れていた。 氾濫したのは、そのひどく汚れた水だったのだ。 その中を、ぼくたちは裸足で歩き、潜水艦を浮かべ、その手で鼻くそをほじくったりしていたのだ。 よく病気にならなかったものである。
ただ一つ救われたことがある。 あの頃、ぼくのすむ地域は、どの家もトイレの水洗化がされてなかった。 つまり、どの家も「ぽっとんトイレ」だったわけだ。 もし、床下浸水ではなく、床上浸水だったらどうなっていただろうか? 氾濫した水は、もちろんトイレの中にも浸入する。 そうなると、当然便壺の中の糞尿が溢れ出ることになる。 各家庭のウンチがプカプカと浮いている図など、想像したくもない。 幸い、床下浸水で収まったので、その図が現実になることはなかったのだ。
さて、いつも台風のニュースを見ていて感じることだが、「これは天災ではなく人災だ」と思える事故が数多くある。 テレビやラジオで再三「出歩くな」と呼びかけているにもかかわらず出歩いて被害にあったり、ドアに手や指を挟んで大ケガをしたり、屋根から落ちたり、中には木から落ちた人もいた。 こういうのは、どう考えても人災だろう。 注意すれば、充分防ぐことが出来たはずである。 「出歩くな」と言っているのだから、出歩かなければいい。 ドアが急に閉まったために手や指を挟んだのだろうが、そこに手や指を置いていなければ、そういう被害にも遭わなかっただろう。 屋根瓦が飛ぶからやむを得ず屋根の上に上がったのだろうが、そういう時はちゃんと命綱をつけおくべきである。 最後に木から落ちた人だが、木に登らなければいいのだ。 いったい何のために木に登ったのだろう。 すべてちょっと考えればわかることである。 まあ、人間の冷静さを失わせることが、天災であるのだが。
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