ところが、そのホースはみな、短かった。 何度も言うようだが、ひさしは高い位置にあるのだ。 そこに短いホースをつけ水を流すということは、雨が降るのと同じことである。 案の定、その水は雨のように降ってきた。 しかも勢いがついているから、地面で跳ね返り、店の中に入ってきた。 おかげで玄関の床はびしょ濡れである。 外にいる部長たちは、そんなこと知ったことではない。 ぼくたちが、浸水した玄関を掃除しながら、「水の向きを変えてくださーい」と言っても、「そんなの無理だー」と言い返してくる。 「店の中に入って来てるんですよー」 「じゃあ、もっと長いホース用意したらー?」 頭に来る。 彼らは、ひさしから水を抜けばそれで終わり、ということなのだろう。
仕方なく、ぼくは売場に走り、売り物の長いホースを用意してきた。 そして、水が出ているホースにつなごうとした。 ところが、径が合わないのか、うまく入らない。 何度やっても同じである。 そこで、水の出ている方のホースの先を強くつまみ、無理矢理売り物のホースの中に突っ込もうとした。 その時、つまんだ先から水が勢いよく出てきて、ぼくの下半身を濡らした。 おかげでズボンと靴の中がびっしょりになってしまった。 しかし、ここでやめるわけにはいかない。 この作業を何度か繰り返した末、ようやくホースをつなぐことが出来た。
垂れ流し状態のホースはそれだけではなかった。 まだやっかいなのがあった。 そのホースは短すぎて、脚立に上らないと手が届かない。 なにせ高い位置にあるものだから、脚立は通常の『A』のままでは届かない。 まっすぐ伸ばし『/』の状態で、壁に立てかけて使わなければらないのだ。 これがフワフワして、気味が悪い。 しかも、ホースをつなぐ時には脚立から手を離さなければならない。 その恐怖心とぼくの持って生まれた不器用さが、次の水難を呼んだ。 延長用のホースを持っていないほうの手で、水の出ているホースを先端をつかもうとしたのだが、暴れているためにうまくつかめない。 そこでホースの中程をつかんだ。 ところがそこをつかんだ瞬間、先端がぼくの方を向いたのだ。 水がぼくの目をめがけて飛んできた。 慌てて下を向いたのだが、そのせいで頭からさんざん水を浴びてしまった。 その後何度も水を浴びながら、四苦八苦してようやくホースをつないだ。 脚立から降りた時には、もう全身びしょぬれになっていた。
さっそく休憩室に行き、タオルで頭を拭いた。 タオルには、無数のゴミがついていた。 汚い水だったのだ。 衣服のほうは、前日のようにエアコンで乾かすことにした。 乾くまでにかなり時間がかかったため、かなり長い時間、鳥肌が立っていた。 問題は靴の中だった。 いちおうドライヤーで乾かしたのだが、充分に乾ききってなかったのだろう。 家に帰って靴を脱いだ時、何とも言えぬにおいがぼくの鼻を突いたのだった。 靴の中は、今も若干の臭いが残っているような気がする。
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