頑張る40代!plus

2004年08月19日(木) 珍客(その2)

会社に行ってからのこと。
荷出しをしている時だった。
「ちょっといい?」
という声がかかった。
お客さんだった。
「どうしたんですか?」
「いやね、今15センチくらいのムカデを見たんよ」
「どこで?」
「そこで」
と、お客さんは隣の売場を指さした。
ぼくはそこまで見に行った。
「このへんにいたんですか?」
「ああ、その隅からヒョコッと出てきた」
「そうですか」
「どうしてこんなところにムカデがおるんかなあ?」
「ムカデだけじゃないですよ。蛇もいるしイタチもいる。山ネズミさえ出てくるんですから」
「山ネズミ?ここは山じゃないじゃないか」
「いや、ここは山を切り開いた土地なんです。だから、いまだそういう生き物が住んでいるんですよ」
「そうか。まあ、どうでもいいけど、そういうのはちゃんと駆除してくれんと困る。早急にやってくれ」
『早急に』と言われても、相手が姿を見せないことには、こちらも手の打ちようがない。
が、とりあえず「わかりました」と言っておいた。

それから30分ほどたった時だった。
うちのパートさんが「しんたさーん」と呼んだ。
「どうした?」
「今ですねえ、ムカデがいたんです」
「どこに?」
「このカウンターの下です」
「えっ!?」
「もうすぐ出てきますよ」
「何か叩く物はないんか?」
ゴキブリの時と同じで、とっさの時に何も見あたらない。
仕方なく、カタログを置いてあるところに行き、そこにあったカタログを手にとった。
その時、「出てきましたよー」という声がしたので、慌ててカウンターに戻った。

体長15センチほどのムカデがそこにいた。
おそらく、先ほどお客さんが言っていたムカデだろう。
ぼくは手に持っているカタログを丸め、2,3発叩いた。
カタログは、ゴキブリを叩いた時のチラシよりは厚みがあった。
が、ムカデは堅いので、2,3発では死なない。
身をよじらせてもだえている。
そこでもう一撃を喰らわせた。
動きが止まった。
そこで、ぼくはそこにあったチリトリにムカデをすくい入れ、朝のゴキブリ同様トイレに行き、便器の中にムカデを放り込み、水を流した。
息を吹き返したムカデは、水の中でもがきながら、便器の中に吸い込まれていった。
「南無阿弥陀仏」
これで終わりである。

『ちっ、また殺生してしまったわい』
朝、殺生はこれで終わると思っていた。
が、続く時は続くものである。


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