【夏の夜】 プレイヤーズ王国に『夏の夜』という歌をアップした。 19歳の夏、ちょうど引きこもっていた頃に作った歌である。 この歌を作るのに、さほど時間はかからなかった。 フッと曲が頭の中に落ちてきて、サッと歌詞が出来上がり、20分後に録音を済ませ、30分後にはアレンジを考えていた。 その結果出来たのが、今回のギター1本のアルペジオである。 このアレンジで、もう27年やっているわけだ。
【曲が落ちてくる】 その頃、よく『曲が落ちてくる』ことがあった。 家に籠もってばかりいて、他にやることがないから、意識がそちら方面に行っていたのだろう。 曲が落ちると言っても、何も曲全体が落ちてくるのではない。 ほんの少しのフレーズが突然頭の中で鳴り出すのだ。 そのフレーズのイメージを膨らませていって、曲が完成するのだ。 さらに歌詞を乗せれば歌となる。 掲示板で鳴っている『湖上』なども、そういうふうにして出来た曲である。
【仙人になりたい】 当時ぼくは仙人に憧れていた。 そのせいだろうか。その頃は毎日麻で出来た白い甚兵衛を着ていたものだ。 家にいる時はもちろん、たまに外出する時も、これを着て出ていた。 仙人に憧れたからといって、何も白い甚平を着る必要もないのだが、その時はなぜか白でいたかった。。 もしかしたら、ピュアでありたかったからなのかもしれない。
さて、なぜ仙人に憧れたかだが、もちろんその頃老荘にかぶれていたせいもある。 が、一番大きな理由は、「仙人」とあだ名されたことがあるからだ。 高校3年の夏休みに、2年時のクラス会をかねて、山にキャンプに行ったことがある。 その時、ぼくがあまりに速く歩くので、ある友人が「しんた、お前は仙人か?もうちょっとゆっくり歩け」と文句を言った。 そのことがあって、キャンプ中、ぼくはずっと「仙人」と呼ばれていたのだ。 ぼくはそう呼ばれることが、なぜか嬉しかったのを覚えている。 当時まだ進路を決めていなかったこともあり、「高校を卒業したら、山に籠もって、仙人にでもなろうか」などと思ったものだ。
高校卒業後、大学には落ちる、就職も出来ない、アルバイトの面接すら落とされるなど、何をやってもうまくいかない。 そういう時、またその思いが頭をもたげてきた。 ぼくが老荘を読み出したのも、そのせいである。 「仙人になる」と言っても、ぼくは、仙人になるための方法を知らなかった。 また山に籠もる勇気もなかった。 その結果、家に籠もることになる。
引きこもりの時期が終わり、積極的に外に出るようになってから後は、「仙人になりたい」などとは思わなくなった。 おそらく、社会への恐れが払拭されたからだと思う。 結局「仙人になりたい」というのは、ぼくの現実逃避にすぎなかったのだ。 今となっては、白い甚兵衛も着たいとは思わない。
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