頑張る40代!plus

2004年04月28日(水) 急患センター(後)

そうこうしているうちに、嫁さんの番が来た。
「お待たせしました。お入り下さい」
そこで医師は、通り一遍の診察をした後に言った。
「レントゲンを見る限り、骨には異常はないようですね」
整形外科医は、何かあると、すぐに骨折に結びつけたがるものである。
ところが、次の言葉に驚いた。
レントゲンで骨には異常がないと自分で言っているくせに、「では、『骨折の疑いがある』ということにしておきますので、整形外科に行って、その旨を話し、もう一度レントゲンを撮ってもらって下さい」と言ったのだ。
それを聞いて、ぼくは『こいつ自信がないのか』と思ったものだった。

医者が「どこか、かかりつけの整形外科はありますか?」と聞いた。
「いいえ」
かかりつけの整形外科があるほど、嫁さんは怪我をすることはない。
もちろんぼくにもない。
「いずれにしろ、明日整形外科に行って、レントゲンを撮ってもらって下さい。では、今日はギプスをしておきますので」
足をくじいたくらいでギプスはないだろう。
嫁さんが「ギプスをしないといけないんですか?」と聞くと、医者は「いちおう骨折の疑いがあるので、今日はこれで固定しておかないと。明日病院に行って、骨折でなければ外してけっこうです」

それを命じられた看護婦は、すぐにギプスを持ってきた。
ギプスをはめながら看護婦は言った。
「奥さんは松葉杖を突いたことありますか?」
「いいえ」
「ギプスをしていると不便でしょうから、松葉杖を3千円でお貸ししますので…。ああ、これは保証金です。松葉杖を返してもらったら、もちろんお金はお返ししますよ」

ギプスをし終わった後、看護婦は松葉杖を持ってきて、演技指導を始めた。
「こうやって、こうですね。じゃあ、やってみましょう」
嫁さんがやると、「ああ、お上手ですねえ。それでいいです。じゃあ、骨折の疑いが晴れるまで、これを使って下さい。いらなくなったら、持ってきて下さい。お金をお返ししますので」

その後手続きを終え、ぼくたちは急患センターを出た。
着いたのが9時前、出たのが11時だったので、およそ2時間急患センターにいたことになる。
帰りの車中、その2時間のことをいろいろ思い起こしていたのだが、その時、あることに気がついた。
それは、嫁さんは診察は受けたものの治療を受けてない、ということだった。
ギプスをして、松葉杖の指導を受けた以外、マッサージをするわけでも、湿布をするわけでもなかった。
あげくに「治療は整形外科で受けてくれ」と言う。
一体何のための急患センターなんだろうか。
あれでは、赤ん坊は泣きやまないし、じいさんの血圧は下がらないだろう。


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