嫁さんは姿勢が悪いせいか、時々変な歩き方になっている。 その影響からかどうかは知らないが、今朝、新聞を取りに行く時に足をくじいたらしい。 今日はお互い休みだったため、前々から計画していた、生鮮食品の即売に行き、近くのお寺に藤棚を見に行ったのだが、その時は別に変わったところはなかった。
ところが、夕方のこと。 突然「足が痛い」と言い出した。 ぼくが「どうしたんか?」と聞くと、「朝くじいたところが痛くなった」と言った。 「昼間はどうもなかったやん」 「うん、だんだん痛くなって」 とりあえず、湿布を貼って様子を見ることにした。
ぼくが風呂から上がった頃、いよいよひどくなったようで、立つことも出来なくなっていた。 「何なら、医者に行くか?」 「別に医者に行くほどのことは‥‥。いや、やっぱり連れて行って」 時間は8時を過ぎたところだった。 「この時間、開いとる病院あるかのう?」 「産業医大は開いとうよ」 「そうか」 ということで、家からさほど離れてない場所にある産業医大に向かった。
産業医大に着き、受付に行った。 事情を説明すると、受付の人は「通院されている方ですか?」と聞いた。 「いいえ、初めてですけど」 「すいませんが、ここは通院されている方だけしか診てないもので」 「じゃあ、どこに行ったらいいんですか?」 「急患センターの本部の電話番号を教えますから、そこで聞いて下さい」 受付の人から、電話番号を書いた紙を受け取り、病院を出てからそこに電話をかけた。
「どちらにお住まいですか?」 「八幡西区ですけど」 「ああ、八幡なら、市民病院で受け付けてますので、そちらに行って下さい」 市民病院は、八幡駅の近くにある。 産業医大からだと、車で20分はかかる。 ぼくは『足をくじいたくらいなんやけ、ここで診てくれればいいのに』と思いながら、市民病院に向かった。
市民病院に着き、受付に行くと、先方から「どうされましたか?」と聞いてきた。 さすがに急患慣れした対応だった。 嫁さんが事情を説明すると、受付の人は「では、こちらの書類に必要事項を書いて下さい」と言った。 嫁さんが書類を書いている時、受付が「あ、ご主人、奥様は立っているのが辛そうなので、入口にある車いすを持ってきて下さい」と言った。 「えっ、車いすですか?」 「ええ」 『足をくじいたぐらいで大げさな』と思いながらも、ぼくは車いすを持ってき、嫁さんをそこに座らせた。
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