年末だからと言って、「忙しくて、忙しくて」と言うほどは忙しくない。 ほとんど普段と変わらない人出である。 ところが、なぜか気忙しい。 この気忙しさは、年末というムードから来るのかもしれない。 確かに人出は変わらないものの、お客さんの顔ぶれが若干違うのだ。 いつも来ている常連さんに混じって、どう見ても地元の人でないような人がいる。 おそらく、仕事納めと同時に、早々と帰省してきた人たちだろう。
そういえば、「今年は例年と違って、正月用品の売上げが伸びず、お掃除用品の売上げが伸びている」と、日用品の係の人が言っていた。 これも、『あるある大事典』の影響だろう。 ぼくの売場はというと、特に変わったことはない。 いつもと同じ商品が売れている。 日用品コーナーでお掃除用品が売れているからと言って、ぼくの部門で特にクリーナーが売れているわけではない。 まあ、「年末だから」と言うので、電球や蛍光灯の売上げだけは伸びているが。
ところで、毎年この時期になると、まるでこの世の終わりが来るかのように、「あれも、これも」とたくさんの物を買っている人たちを見かける。 そういう人を見るたびに、ぼくは「いったい何を焦っているのだろう?」と思ってしまう。
新しい年が来ると言っても、日が一日明けるだけの話である。 そこに、何か新しいものが待っているわけではない。 そこで待っているのは、昨日までと何ら変らない、いつもの生活なのだ。 朝が来れば、夜に向かって動き始める、ただそれだけの生活を迎えるだけのことなのに、なぜ人は焦るのだろう。 たくさん物を買えば、何か新しいことが始まるとでもいうのだろうか? きっとそういう人たちは、自分たちが勝手に作り上げた「年末ムード」というものに踊らされている人なのだろう。
さて、今年も残すところ、あと3日である。 例年通り、ぼくは大晦日まで休まない。 なぜか? それは、年末ムードを盛り上げ、来たお客さんに「あれも、これも」と商品を買わせるためである。
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