“トゥルルルル、トゥルルルル…” 「はい」 「ああ、ナオね。今日は休みか」 少し訛りのある、ドスの効いたおばさん声である。 「あのう…」 「お前がこの間言いよったことなあ…」 「どちらにおかけですか?」 「え、何言いよるんか?」 「ナオじゃありませんけど」 「何冗談言いよるか」 「こちらは、しんたですけど」 「ええっ!?」 「しんたですけど!」 「ふざけるな。忙しいのに!」 「だから違うと言ってるでしょうが!」 「何が違うんかっ!?」 「間違い電話ですっ!」 「間違い電話だとぉ? …ああ、すいませんねえ。ハハハ…」 “ガチャッ!”
今日は休みだったので、ゆっくり寝ようと思っていたら、こういう電話が入った。 最近の若い者は電話のマナーを知らないとよく言われているが、中年以降の人の中にも常識知らずな電話をかける人が多い。 店にいるとよくクレームの電話がかかってくるが、例えば自分が操作を間違っているのに、それを店のせいにするような理の通らないクレームは、年寄かおばさんからのものが多い。 それも、決まって口汚い。
とにかく、その電話のせいで、ぼくは睡眠を妨げられた上に、その後は腹が立って眠れなかった。 おかげで、今日の休みは台無しになってしまったのだった。 今年は、今日を入れて後二日しか休みが残っていないというのに…。 貴重な一日を返してもらいたいものである。
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