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2003年12月13日(土) えびす谷とアケビ谷

家から歩いて20分ほどの場所に、けっこう大きな公園墓地がある。
いつの頃に出来たのかは知らないが、ぼくが小学校に通っている頃にはもう出来ていた。
ぼくたちのクラスは、運動会のリレーやマラソン大会の練習で決まってここを使っていた。
その公園墓地の一番見晴らしのいい所からは、小学校の校区が見渡せた。
東側は一面田んぼの風景で、西側は深い森になっていた。
その西側の深い森のことを、地域の人は『えびす谷』と呼んでいた。
なぜ『えびす谷』なのかという詳しいことは知らないが、友人から「そこにえびす様の祠があるからだ」と聞いたことがある。

夕闇がかかると、そのえびす谷にぼんやりとした灯りが、一つ二つ浮かんだ。
しかし、それはえびす様の祠の灯りではなく、民家の灯りだった。
人が住んでいたのだ。

さて、時は流れて、現在その地がどうなっているのかというと、高級住宅地になっているのだ。
近くに医大が出来たせいか、その付近にたくさんの病院が出来た。
市は、そこの医者のためにえびす谷を切り開き、分譲地にしたのだ。
そこに建っているのは建売り住宅ではなく、どの家も注文住宅である。
何年か前に、そこを歩いてみたことがあるが、新たに小学校が出来、どこまでも住宅が続いており、まさかそこがかつて『えびす谷』と呼ばれていた場所だとは思えなかった。

さて、校区内にはもう一つ『谷』のつく、『アケビ谷』という場所があった。
その名の通り、アケビの木が多く生えているところで、秋になるとたくさんのアケビの実がなるという。
残念ながら、ぼくはそこに行ったことがない。
理由はアケビが好きではなかったからだ。
まあ、仮にアケビが好きだとしても、当時は忍者マンガの影響で『谷』のつく場所には毒ガスが出ると思っていたので、行かなかっただろう。
もちろん、当時のえびす谷にも行ったことはない。
ということで、その『アケビ谷』の所在は今もってわからない。
おそらくそこも、宅地になっていることだろう。


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