| 2003年11月02日(日) |
キャンディーズ考察 5 |
ぼくがこの歌を初めて聴いたのは、一浪して大学受験に臨んだものの、ことごとく失敗した頃だった。 3月の頭だった。 長距離トラックに乗っていた伯父の手伝いで、熊本に行ったことがある。 夜中に家を出、熊本に向かった。 久しぶりに会った伯父と、話が弾んでいたのだが、突然ぼくはしゃべることを忘れてしまった。 その時、ラジオでかかっていた歌に鳥肌が立っていたのだ。 高校1年の時、初めて吉田拓郎の『制服』という歌を聴いた時以来のショックを受けた。
「誰だ、これ?」 声からするとキャンディーズっぽいのだが、電波の関係で誰が歌っているのかがよくわからない。 よくわからないがかっこいい。 まさにこの歌は、この人たちがうたうのにふさわしいような気がした。 ようやく曲が終わり、DJが「キャンディーズの新曲『やさしい悪魔』をお届けしました」と言った。 「やっぱり」 アイドルポップスを歌うアイドルではない、本物のキャンディーズが確立した、とぼくは思った。
その余韻は、何日も続いた。 ぼくの頭の中では、ずっとこの歌が流れていた。 ここからぼくのキャンディーズが始まったと言ってもいい。 実際ぼくがキャンディーズのファンであったのは、この歌から解散までであった。 時間にしてわずか1年。 その1年にキャンディーズは、『暑中お見舞い申し上げます』『アン・ドゥ・トロア』『わな』『微笑みがえし』、『やさしい悪魔』を含めると5曲をシングルとして発表した。 もちろん、これらすべてが「ちょっと大人」という音楽ではない。 『暑中お見舞い申し上げます』と『微笑みがえし』は、アイドルポップスである。 しかし、一度自分たちの音楽を極めた彼女たちは、そういうアイドルポップスでさえ、自分たちの音楽にしていった。 新進のピンクレディーが出てきても、決して焦ることなく、染まることなく、自分たちの音楽を追究していった。
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