ホークスが負ける日は、いつも朝から嫌な気がするのだが、今日はそれがなかった。 朝から何度イメージしても、王監督の胴上げしか浮かばない。 ぼくはそれで今日の優勝を確信したのだが、それでもいろいろな雑念が襲う。 そこで携帯電話の待受け画像を和田投手に換え、一日中必死に拝むことにした。 何せ、「神様、仏様、和田様」なのだから。
その和田投手が、期待通りやってくれた。 1回の表に、今岡にヒットを打たれ、続く赤星のバント処理を誤ったものの、後続をきっちり断ち切ってくれた。 「これで流れが来た」とぼくは思った。 その通りになった。 ノーアウト1,2塁から、またもや不利な判定で井口がアウト。 しかし、その判定が今回はマイナスにならなかった。 選手会長松中の2点タイムリー。 この人が打てば、もう大丈夫である。 あとはバタバタといつものように点を取って、いつものように勝った試合だった。
しかし、終盤6−1だったにもかかわらず、ぼくは落ち着かなかった。 シーズン中、何度かこういう展開で逆転されたことがあったからだ。 会社内で「6−1なら、もう大丈夫やろ」という声が上がったが、シーズン通してホークスの戦いを見てきた人間としては気が気じゃない。 何度も携帯の待受け画面を見つめて、和田を拝んだ。
8回裏に家に着いたぼくは、ドキドキしながらテレビにかじりついていた。 「ここでダメ押し点を入れてくれ」 だが、あいかわらずウィリアムスを打てない。 三者連続三振である。
いよいよ9回表。 珍しく王監督が動かなかった。 シーズン中なら、ここで岡本や篠原を投入する場面である。 ということは、このまま和田で行くということだ。 ここでぼくは、ようやく優勝を確信した。 和田は2アウト後、広沢から一発を浴びたものの、危なげないピッチングで投げきった。
このシリーズは「内弁慶シリーズ」などと言われたが、別に福岡ドームで4戦やったからホークスが優勝出来たわけではない。 2000年のON対決で巨人に負けてから、ずっとホークスは「日本一奪回」を目指してやってきたのだ。 もちろん阪神もそうであったろうが、18年前に悔しい思いをしていない。 そのため、選手の気持ちのどこかに「阪神だから、しかもレベルの高いセリーグの代表だから、日本シリーズに出れば勝てる」という安易な思いがあったのではないだろうか。 しかし、ホークスの場合は違う。 ON対決で悔しい思いをした選手が、ほとんど残っているのだ。 そのため、「日本一」へのこだわりが阪神に比べて強かった。 ここに1勝の差が出たのだろう。
とはいえ、阪神の選手はみんな怖かった。 2000年の巨人軍より怖かった。 誰もが打ちそうな雰囲気を持っていた。 「もし、杉内がシーズン通りに力んでいたら」「もし、第6戦を寺原に投げさせていたら」と思うと、空恐ろしい気がする。 投手陣も、伊良部以外は打てそうな気がしなかった。 ここでも「もし、吉野が先発だったら」「もし、ウィリアムスが先発だったら」と思うと、空恐ろしい気がする。
最後に、広沢の一発。 なぜか、近鉄カズ山本の引退試合の一発とダブって見えたのだが、そう思ったのは、ぼくだけだっただろうか。
|