今日の昼間、大阪から取引先の人が来た。 開口一番彼は言った。 「しんたさん、明日にも胴上げですね」 「胴上げ」、言うまでもなくダイエーホークスのことである。 「そうですね。あ、そういえば、阪神優勝おめでとうございます」 「ははは、ありがとうございます。で、しんたさんは優勝が決まったら中洲で飛び込みですか?」 「ホークスのファンは、そんなことしませんよ」 「でも、前回はやってましたやん」 「いや、今回は福岡ドームの屋根に登るんですよ。他に、福岡タワーパラグライダー隊とか、道頓堀ダイブ部隊も用意していますから」
彼は阪神の優勝が嬉しくてしかたない様子だった。 「何せ、18年ぶりの優勝ですからね。大阪は盛り上がってますわ」 「そうでしょうね。99年にホークスが優勝した時は、福岡の球団としては38年ぶりだったから、こちらもずいぶん盛り上がりましたからね」 「今年の阪神は強いですよ。100打点カルテットなんか目じゃない」 「そうですか。でも、ホークスは顔で勝ってますから」 「顔って、そんなの有りですか?」 「もちろん有りですよ。井口とか川崎とか、ホークスは男前揃いですよ」 「でも、野球は顔でするもんじゃありませんわ」 「いや、今阪神ファンでも、日本シリーズになったら、女性の大半は男前の多いホークスを応援するでしょう。そうなると、甲子園球場の半分以上がホークスファンになる。そういう人たちに後押しされて、ホークスが勝つんですよ」 「そんな、無茶苦茶ですわ」
「それはそうと、阪神グッズ売れてるでしょう?」 「売れるわけないじゃないですか。お客さんは、みんな冷ややかな目で阪神グッズを見てますよ」 「おかしいなあ、全国ではけっこう売れているのに」 「全国で売れても、福岡では売れません。目の毒だからさっさと持って帰って下さい」 「まあ、そう言わんと、日本シリーズが終わるまで置いといて下さいな」 「置いとったら、惨めになるだけでしょ?」 「そんなことはない。優勝は阪神ですよ」 「ああ、そうですか。いや、いいんですよ、優勝したって。どうぞ、優勝して下さい。うちは来年もありますから」 「・・・」
しばらく舌戦が続いた後、「日本シリーズが終わるまで、商売になりませんわ」と言って、彼は帰っていった。 「商売」って、いったい彼は何を売込みに来たんだろう?
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