昨日の夕方のことだ。 店の入口前に犬の糞が落ちていた。 二つ転がっていたようで、ぼくが気がついた時、一つの固まりにはもう何人かの人が踏んだあとがあった。 放っておくわけにはいかないので、ぼくはトイレットペーパーを持ってきて、まず踏まれてない固まりをわしづかみにし、トイレまで持って行った。 まだ少し温もりが残っているようで、何となく気持ち悪かった。
一方の踏まれたほうは、水を引っかけて、デッキブラシで磨こうと思った。 が、そのデッキブラシが見当たらない。 その代用となるような物もない。 しかたがないので、これもトイレットペーパーで拭くことにした。 店の前はレンガが敷いてあるのだが、その目地に入った糞がこびりついて取れない。 水を少しずつ流しながら、慎重にやったのだが、それでもだめだ。 しかも悪いことに、トイレットペーパーは水が染みこむと溶けていく。 指に水の感触がするたびに、指を臭っていた。 そのうち面倒になってきて、最後は水をバシャーっと流して終わりにした。
あとで話を聞くと、ぼくが糞に気がつく少し前に、大きな犬が入口付近にいたとのことだった。 飼い主がついていたらしい。 こういう場合、ちゃんと飼い主が始末をするのが筋ではないだろうか。 ペットを飼う人のマナーはなってないと、よく囁かれている。 自分が他の犬の糞を踏んだ時のことを考えてみろ、というのだ。 マナーの悪い人に限って自己中心的な人が多いから、きっと目くじらを立てて怒るだろう。 たちの悪い奴なら、慰謝料を請求してくるかもしれない。
そういえば、以前もこんなことがあった。 ある若い男性客が飼い猫を抱いて買い物にきていた。 そのお客が、ぼくの売場の前を通りかかった時である。 手が疲れたのか、猫を床におろしたのだ。 その瞬間だった。 猫は小便をした。 ぼくは、その光景を見ていたのだが、その客が慌ててポケットの中を探ったりしていたので、てっきり後始末をするものだと思っていた。 ところがである。 何と、そのお客はその猫を再び抱えて、こちらの方を睨み付け、その場を立ち去った。 追いかけて行って一言言ってやろうと思ったが、そのまま濡れた床を放っておくわけにもいかず、キッチンペーパーを持ってきて、拭き上げた。 そのお客はさっさと出て行ったようで、もう店の中にはいなかった。
まあ、ペットを連れてくる人すべてが、こんなマナーのない人たちではない。 中には、「すいません。犬がおしっこをしたので、何か拭く物貸して下さい」と言ってくる人もいる。 こちらが「手伝いましょうか」と言っても、「いいえ、うちの犬がやったことですから」とちゃんと自分で後始末をやっている。
ペットは人間性を映す鏡だとも言われる。 ペットに、己のマナーの悪さを語ってもらうのも、寂しいものである。
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