ぼくのズボンのポケットの中は、いつもいっぱいである。 何が入っているかというと、右のポケットには家や車の鍵が入っている。 夏場はタバコとライターも入っている。 タバコはマイルドセブン・スーパーライトBOXである。 箱が角張っているので、どうしてもポケットは膨らんでしまう。 ライター。 愛用しているのは、3本組98円のライターである。 ぼくはZIPPOのライターをいくつか持っているのだが、使ったことはない。 オイルを入れるのが面倒であることと、ポケットに入れるとかさばるからだ。 ポーチか何かに入れて持ち歩けばいいじゃないか、と言う声もある。 しかし、ぼくはそういうものを持ち歩く習慣を持ってないし、基本的におっちょこちょいであるぼくのことだから、ついうっかりして、どこかに忘れてくるに違いない。
左のポケットには、千円程度入った小銭入れ。 お金はそれ以上持ち歩かない。 持っているだけ遣ってしまうからである。 つまり、自分へのセキュリティである。 夏場はその上に携帯電話も入れている。 これも、タバコと同じ理由からである。
後ろの左ポケットには、免許証入れ。 中には免許証・キャッシュカード2枚・クレジットカード2枚・メンバーズカード2枚、数々の領収書・本屋の請求書・お守り袋などが入っている。 なぜか刑事さんの名刺なんかも入っている。 そのため、革の免許証入れは、BOXタイプのタバコの箱より厚くなっている。 領収書や本屋の請求書に関しては、期限が来るまでは入れている。 大切なものなので、別の所に保管していたほうがよさそうなものであるが、ぼくの場合はそうではない。 家で保管する場所といえば、机の引き出しの中である。 しかし、ぼくの机の引き出しは開かない。 なぜなら、ぼくが大切だと思っているものがたくさん入っていて、詰まっているのである。 無理して開けようとすると、書類などはすぐに破れてしまう。 そういう意味で、免許証入れの中が一番安全なのである。
後ろの右ポケットには給料袋。 もちろん明細のみである。 これは給与明細を貰った時、入れるところがないので仕方なくそこに入れているだけのことで、別に深い意味などはない。 ズボンを履き替える時、どういうわけか、鍵や小銭入れと同様に、給与明細も替えたズボンのポケットに入れ直している。 給与明細などは1回しか見ないので、後は別に家に置いていてもいいのだが、その時は何も考えずに入れ直している。 ポケットから出すのは、その愚を悟った時である。 しかし、次の月になると、そのことを忘れ、同じことをやっている。
ふと思ったことだが、美空ひばりの『東京キッド』という歌の一節、「右のポッケにゃ夢がある…」は、右のポッケには何も入ってないということなのではないだろうか。 何もないから夢が持てるのだ。 給与明細や請求書なんかが入っていたら、夢を持てないだろう。
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