いよいよ開店にこぎついた。 人混みに酔ったというのだろうか、今日は久々のお客さんにもまれ、少し頭が痛くなってしまった。
朝8時半の集合という、朝の弱い、しかも昨日の日記が出来ていなかったぼくにとって、ちょっときつい改装オープン初日となった。
夜中の2時まで起きて日記を書いていたのだが、どうも文章がまとまらない。 そこで、朝少し早めに起きて書くことにした。 ところが、朝起きてもうまく書けない。 最後の部分がどうしてもまとまらないのだ。 何度も書き直しをした。 しかし、納得のいく文章が書けないままに、時間が来てしまった。 「仕方ない。これでいくか」 と妥協したのが、昨日の日記だった。
会社に着いたのは、8時半のちょっと前だった。 かなり早めに出たつもりだった。 予想された渋滞はなかったものの、今日はよく信号に引っかかる日だった。 そのため、渋滞に巻き込まれたのと同じくらいの時刻に着いてしまったのだ。
店に着くなり、店長が「朝礼します」と言った。 今日の朝礼は、本社の人間が来ているせいか、幾分長め朝礼となった。 朝礼の最後に、「いらっしゃいませ」の訓練をいつもやっているのだが、その声が今日はやたら大きい。 本社の人が来ているので、みな少し興奮気味だったのだろう。 ちなみに、ぼくはいつも口だけ動かしている組である。 今日もそうした。
さて、朝礼が終わり、売場に帰ろうとした時だった。 Kちゃんというパートさんが、「しんちゃん」とぼくを呼んだ。 ぼくが「あっ?」と振り向くと、Kちゃんはぼくの頭を指さし、「はねてるよ」と言った。 最初、何のことを言っているのかわからなかった。 「頭?」と、ぼくは自分の頭を触った。 すると手のひらに毛先の感触が走った。 『もしかしたら』と、ぼくは慌ててトイレに駆け込んだ。 洗面所で鏡を見ると、後ろ髪が雀の尾っぽのように、束ではね上がっていた。
昨日、頭を洗ったのだが、風呂に入るのが遅かったせいで、十分に乾かないまま床に就いてしまった。 そのせいで、朝起きてみると、髪の毛が爆発していた。 上記のように、日記に専念していたものだから、出掛ける準備に時間を割けなかった。 いちおう爆発は整えたのだが、後ろまで目が行き届かなかったのだ。
さっそくぼくは髪を水で濡らし、念入りに寝癖を直した。 おかげで、何とか寝癖は収まった。 と思ったが、数本の髪の毛はまだはねている。 しかし、そう目立つほどではないので放っておいた。
ところが、夜になって、事務所の窓に映っている自分の姿を見た時、あ然としてしまった。 何と、朝よりもはね方がひどくなっていたのだ。 いつのその状態になったのかは知らないが、この格好でお客さんを相手にしていたのかと思うと、情けなくなってきた。 ぼくは、よくお客さんから「白髪のにいちゃん」と呼ばれているが、これからは「雀のにいちゃん」と呼ばれるのかもしれない。
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