しかし、1日に2編も書くとなるとよほどのことがない限り、違った内容の日記は書けない。 で、今回も浮浪者ネタを書きますわい。
長崎屋に入ったばかりの頃のこと、えらく汚いスーツを着込んだ御仁が店にやって来た。 ぼくがそのスーツ氏を見ていると、上司のHさんが笑いながら「あの人ねえ、この時期になったら来るんよね」と教えてくれた。 さらにHさんは「よく見てん。何か書いた紙を持っとるやろ」と言った。 スーツ氏の手元に目をやると、少し大きめのわら半紙を持っていた。 なるほど、そこに何かメッセージを書いている。 近寄って読んでみると、汚い字で『けっこん 人生』と書いてあった。 Hさんのいるところに戻り、「『けっこん 人生』と書いてました。何ですか、あれ?」と聞くと、Hさんは「よくわからんけど、毎回書いとることが違うんよねえ」と言った。 Hさんの話では、そのスーツ氏は東大を卒業しているという。 「東大出て、何であんな格好してるんですか?」 「よくわからんけど、卒業した後に大企業に勤めよったらしいんやけど、ある時頭を打って、ああなったらしいよ」 頭を打ってから人生観が変わったとでも言うのだろうか。 それにしては、大企業のエリートから浮浪者への転身、えらく大きな変化である。
浮浪者と呼んでいいのかどうかわからないが、以前、黒崎駅前に汚い身なりの乞食が座っていた。 ムシロを敷き、その上でずっと土下座をしている。 彼の前には、空き缶が置いてあり、そこには小銭が入っていた。 昔のドラマやマンガなどで描かれていた、乞食スタイルそのものだった。 人の話によると、その乞食はいつも朝7時にやって来、夜7時に帰るらしい。 12時間労働である。 ある時友人が「あの乞食の後を付けていった人がおってねえ、その人から教えてもらったんやけど、あの乞食、けっこう金持ちらしいよ」と、教えてくれた。 何でもその乞食は、表通りでは腰を曲げ苦しそうにダラダラと歩いているが、裏通りに入ると突然背筋をピンと伸ばして歩くらしい。 彼の行き先は裏通りの駐車場だった。 彼は、そこに止めていた黒塗りのクラウンの鍵を開けた。 そして、車の中に置いてあった荷物取り出して、駐車場内にあるトイレの中に入っていった。 しばらく待っていると、トイレから一人の紳士が出てきた。 横顔を見ると、先ほどの乞食だった。 彼は車に乗り込み、その車を運転して颯爽と駐車場を出ていったということだった。 乞食やってクラウンが買えるのだ。 こうなれば乞食も立派な職業である。 ということは、乞食は浮浪者ではないということになる。 このへんの判断が難しい。
昔読んだ、本宮ひろしのマンガ『男一匹ガキ大将』で、戸川万吉が乞食をやったことがある。 最初はふんぞり返って座っていたが、だんだん謙虚になっていく。 そこで何かをつかんだ万吉は、大きな人間に成長していったのだ。 「乞食を3日やったらやめられない」という。 やはり乞食には、やったことがある人にしかわからない何かがあるのだろう。 長い人生、一度でいいから、何もかも投げ出して乞食をやるのも一興である。 だけど、ぼくには出来ないだろうなあ。
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