さっそく洋楽ベスト20といきたいが、続けてやると面白くないので、今日はやめることにします。 というより、心の準備ができてないので。
さて、朝のことである。 開店前に、突然ぼくの携帯電話が鳴った。 『誰だろう?』と画面を見てみると、店長からだった。 『今日、店長休みやったかなあ?』と思いながら電話を取った。 「しんちゃ〜ん、愛してる」と言う。 いきなりの愛の告白である。 50代半ばの男から愛の告白を受けても、全然嬉しくない。 しかも、ハゲである。
「はい何でしょうか?」 「そっけないねえ」 「忙しいのに、つまらんこと言うけですよ」 「いいやないね。うだうだ・・・」 「で、ご用件は?」 何でも、今日は店周りの草刈をするので、開店準備をするように、店長代理に伝えてくれということだった。 店長代理に用があるのなら、わざわざぼくの携帯に電話することないだろう。 こっちだって忙しいのだ。 本人に直接電話しろ。
そういえば、前にもこんなことがあった。 その日休みの店長から、ぼくの携帯に電話が入った。 「もしもし、何かあった?」 「え?」 「電話が入っとった」 「おれ、してないですよ」 「いや、事務所からやけど」 それなら事務所に電話すればいいじゃないか。 ぼくはめったに事務所に行くことがないので、そこであったことなど知るはずがない。
店長はぼくの携帯によく電話をかけてくる。 「しんちゃ〜ん、うちの嫁さんがいじめる〜」 「今から飲みにおいで〜」 「今日はうちの草刈したよ〜」 ぼくにとっては、どうでもいいことである。 こういう電話の時の店長は、たいがい酔っている。 おそらく『ゆでだこ』みたいに顔を真っ赤にして、電話をしているのだろう。
自分の携帯を替えた時にはすぐに電話してくる。 「携帯替えたよ〜」 「そうですか」 「今度からこの番号に電話してね」 「わかりました」 「ところで、これどうやって使うんかねえ」 「知らん!」 ぼくはドコモ、店長はauである。 操作方法が違うので、ぼくが知るわけがない。 「auの人に聞いたらいいやないですか」 「冷たいねえ。教えてくれたっていいやん」 「だから、知らんっちゃ。取説よく読んだらわかるでしょ?」 「じゃあ、あんた読んで勉強しとって」 「・・・」
突然メールを始めると言い出して、メールアドレスを考えてくれ、と言われたこともある。 その時は、事務所の女の子が考えた「R2323」というアカウントにした。 「R」は店長のニックネームの頭文字で、「2323」はフサフサである。 凄い皮肉だったが、本人は「お、いいねえ」といたく気に入っていた。 幸せな人である。
話は元に戻る。 店長代理にそのことを伝えた。 「草刈しよるけ、開店準備ができんち言うんやろ。さっき聞いたよ」 「えっ! 今電話があったんやけど」 「何考えとるんかねえ、あのおっさん」 「何も考えてないでしょう」
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